母子世帯の「ディープ・プア」に支援が急務!

保護者の収入の差(経済格差)によって、子どもの成績や学歴にも差(教育格差)が出ることが、全国学力・学習状況調査の結果などからわかっています。とりわけ、貧困家庭の子どもが大人になっても貧困状態から抜け出せない「貧困の連鎖」は、子ども自身には責任がないだけに、教育支援も含めて、社会全体で解消すべき課題として認識されるようになってきました。中でも早急に手当てが必要なのが「ディープ・プア」と呼ばれる世帯です。

13.3%が該当、相対的貧困率も上昇

貧困率には、生存に必要な最低限の収入を得られない「絶対的貧困率」と、国民一人ひとりの収入(世帯人数の差を調整した可処分所得)を下から順に並べた時の真ん中の半分(貧困ライン)に満たない「相対的貧困率」の、2種類があります。相対的貧困率は、社会の中での状況を浮き彫りにするものとして、先進国でも重要な指標となっています。

労働政策研究・研修機構(JILPT)が2011年から行っている「子育て世帯全国調査」の第5回(18年11月1日現在)の結果によると、子育て世帯の平均収入(税込み)は、二人親世帯が734.7万円だったのに対して、母子世帯は299.9万円でした。平均で見ても、圧倒的な経済格差があります。しかも、二人親世帯が前回調査(16年)に比べ13万円ほど増えたのに対して、母子世帯は逆に17万円ほど低くなっています。

相対的貧困率は、二人親世帯が5.9%と前回より0.3ポイント下がったのに対して、母子世帯は4.4ポイント増の51.4%と、さらに貧困が広がっています。

より深刻なのが「ディープ・プア」です。貧困ラインの、さらに半分に満たない状態を言います。調査によると、母子世帯では13.3%(同0.1ポイント増)と、7~8世帯に1世帯ほどに当たります。深刻な貧困は、私たちのごく身近にあるのです。

高校受験を控えても通塾させられず

生活に余裕がなければ、子どもの教育にお金を掛けることもできません。

「学習塾の支出を負担できない」割合は、二人親世帯で子どもの人数により▽1人14.6%▽2人16.1%▽3人以上18.9%だったのに対して、母子世帯は各▽31.7%▽37.2%▽45.0%と高くなっています。とりわけ子どもの年齢別に見ると、母子家庭では▽0~5歳34.8%▽6~11歳39.1%▽12~14歳36.0%▽15~17歳39.5%と、二人親世帯(各▽20.0%▽9.7%▽7.4%▽10.2%)に比べても低く、高校受験を控えても通塾させられない様子がうかがえます。

小・中・高校生の第1子の学業成績が「良好」「まあまあ良好」だという割合は、二人親世帯が46.0%だったのに対して、母子世帯は33.0%と、13ポイント低くなっています。とりわけ母子世帯の場合、娘のほうが息子より学業成績が良く、中高生になると、その差はさらに広がります。男子の場合、さらに手厚い支援が求められそうです。

10月から幼児教育・保育の無償化と、「真に必要な」子どもに限った高等教育(大学など)の無償化も始まりました。教育費の問題に関心が集まっている今、社会全体の課題として真剣に考えたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/192.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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