地方に新たな≪総合大学≫ができる!?

年末に入り、受験勉強にもスパートが掛かっていることでしょう。合否次第とはいえ、地元の大学にするか、大都市圏の大学を選ぶかは悩ましいところです。そんななか、地方にも新たな≪総合大学≫ができるかもしれないといいます。主な入学年齢である18歳人口が減って、定員割れの大学も多いというこの時期に、いったいどういうことでしょうか。

前橋市内の国公私立6大学が連携

11月に行われた中央教育審議会の大学分科会で、興味深い報告がありました。前橋市が≪前橋総合大学≫を作る構想を打ち出したのです。といっても、大学の新設ではありません。同市内には、既に群馬大学という国立の総合大学があります。さらに公私立も含めた市内6大学が共同することで、仮想の総合大学を作ろうというのです。

群馬大にしても、設置しているのは4学部(教育学部・社会情報学部・医学部・理工学部)だけで、しかも社会情報学部は1993年と比較的新しくできたものです。教育学部も2020年度から、宇都宮大学と連携した共同教育学部をスタートさせることにしています。一方、6大学が集まることで、経営学系や文学系、語学・国際学系、福祉学系など、より多様な分野の教育を提供することができます。

前橋市では大学進学や就職に伴う若者の流出が今も続いており、市内の雇用を増やすにも「稼げる企業」を増やすことが不可欠です。そこで市内大学と連携する「めぶく。プラットフォーム前橋」構想を打ち出し、地域人材の育成・定着を図ろうと考えたわけです。

同じ会合では山梨大学(教育学部・医学部など4学部)も、まずは山梨県立大学(看護学部など3学部)と連携した地方大学の機能強化を打ち出すとともに、私立大学も含めた県内全大学の協働に広げたい考えを表明しました。

文科省はガイドライン策定へ

こうした各地の動きは、中教審が2018年11月の答申で打ち出した「地域連携プラットフォーム」に基づくものです。地域にある複数の大学などが自治体や経済団体などと連携して、地域人材の育成を強化していこうというもので、文部科学省は、中教審の論議を踏まえて2020年3月にもガイドラインを策定したい考えです。

地方大学をめぐっては、18歳人口の減少で、現行の定員を維持することが難しくなりつつあります。一方、政府は地方創生の観点から、地方大学への進学を増やそうと、2016~18年度に3大都市圏の収容定員の抑制策を採るとともに、東京23区内に関しては当面、定員増を認めないことにしています(専門職大学・短大を除く)。その結果、難易度が上がり、例年なら合格できたと思われる受験生も不合格になるという事態も起こっています。

それに対して地域連携プラットフォームは、地方大学の共存共栄を図りながら、お互いの強みを生かし合うことで、地域に幅広い教育・研究を提供し、地域の活性化を図ろうというものです。

地方の総合大学といっても、国立の旧7帝大や有名私立大学のように、幅広い分野の学部を多数持っているとは限りません。そんななか、地域連携によって強大な≪総合大学≫ができれば、地域全体として大学教育の魅力をアップし、受験生の流出を食い止められるというわけです。プラットフォーム構築が各地で進めば、大学選びの構図も変わってくるかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※2019年11月12日 大学分科会(第151回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/1422495.htm

※中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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