大学教育は役立ってる? 学生目線で評価

文部科学省は、大学生に学習の実態を尋ねる「全国学生調査」を実施しています(12月20日まで)。今年度は試行調査という位置付けですが、515大学が参加しており、対象となる学生(学部3年生)は約41万人に上ります。各大学で教育改革が進む中、本格実施されれば、受験生の大学選びにも大いに参考となりそうです。

社会で通用する能力とのつながりも尋ねる

同調査は、2018年11月の中央教育審議会答申の提言を受けたもので、学生本位の教育に転換することを目指して、全国共通の調査項目を立てることで、学生目線から大学教育や学びの実態を把握しようとするものです。調査方法は、今どきの学生に合わせてインターネットを通して行い、スマートフォン(スマホ)でも10分ほどで回答できます。

質問は選択式5問、自由記述(任意)2問。たとえば第1問では、大学で受けた授業で「授業内容の意義や必要性を十分に説明してくれた」かどうかや、「教員から意見を求められたり、質疑応答の機会があった」かどうかを、4段階で評価してもらいます。また、第4問では、受けた大学教育が▽将来の仕事に関連しうる知識・技能▽文献・資料・データを収集・分析する力▽論理的に文章を書く力▽人に分かりやすく話す力▽問題を見つけ、解決方法を考える力▽多様な人々と協働する力……など、社会に出てからも通用する≪汎用的能力≫を身につけることに役立っていると思うかどうかを尋ねます。

また、第5問では(1)大講義(出席者数が100人以上)(2)中講義(同50人以上100人未満)(3)小講義(同50人未満)(4)演習・ゼミ(5)実験・実習……を、どのくらいの割合で受けたかを聞きます。

日進月歩で進む改革を把握

大学教育をめぐっては、文科省が進めている「高大接続改革」の下で、「三つの方針」改革が行われています。まず各大学が社会から評価されるような人材像を明確化する「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー、DP)を策定し、そのような人材を育成するためのカリキュラムや授業方法を「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー、CP)に基づいて決めることとし、そうした教育にふさわしい学生を「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー、AP)に基づいた入試方法によって選抜する……という考えです。決して1点刻みの入試で少しでも≪優秀≫な学生を入学させようという発想ではないことに注意する必要があります。問われているのは、入学させた後の教育で学生をどう伸ばすかなのです。

三つの方針改革により、大学教育は日進月歩で変わりつつあります。もちろん昔と変わらない大学もありますが、保護者の学生時代のように偏差値で序列化された感覚は、もう通用しません。その大学が本当に自分に合っていて、社会で活躍できる力を伸ばしてくれる授業を日々行ってくれるかどうかをも見極める必要があるのです。

集計結果は4月以降の公表予定です。今年度は試行調査のため、大学ごとの集計は行いません。それでも参加した大学にとっては、提供している教育の実態を学生目線で把握できることで、さらなる教育改革を考えるヒントになることでしょう。また、本格実施となれば、各大学の教育の質が比較可能になり、大学にとっては死活問題です。調査が、学生一人ひとりを着実に伸ばす丁寧な教育をいっそう促す契機となってほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※2019年度「全国学生調査(試行実施)」について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/11/1421627.htm

※中教審答申)2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(2018年11月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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