学生の評判で大学選びの時代に?

文部科学省は、各大学の「教育の姿」を学生目線で「見える化」する調査に乗り出すことを決め、今秋に一部大学で行う試行調査の概要を明らかにしました。その大学でどんな教育が行われ、どんな力が付くのかが、学生の立場からわかるようになります。全大学に拡大されれば、高校生や保護者にとって、大学選びの有力な情報となりそうです。

スマホで10分、生活時間や講義人数も尋ねる

大学進学率の上昇はもとより、18歳人口の減少と大学数の増加が続くことによって、大学は教育の「質」を厳しく問われるようになってきました。これまでも国は大学の情報公開を進めるため「大学ポートレート」を整備してきましたが、まだ社会からの信頼を得るための十分な情報が掲載されていないのが現状です。

そうした中、昨年11月の中央教育審議会答申「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、大学教育の質に関する情報を社会が理解しやすくするため、国が学生調査や大学調査を行い、各大学を比較できるよう、一覧化して公表することを求めました。
文科省が6月13日、中教審の大学分科会に示した案によると、「全国学生調査」は国立教育政策研究所と共同で実施。今どきの学生向けに、スマートフォン(スマホ)などを使ったウェブ調査の形で実施。10分程度で回答できるようにします。質問するのは、▽大学での授業や経験▽学習時間▽大学で受けた授業形態▽大学教育で身に付けた知識や能力……で大問5問程度を想定しています。

試行調査では、予習・復習やアルバイト・サークル活動なども含めた1週間の生活時間、これまでに受けた授業の形態(100人以上の大講義、50人未満の小講義、演習・ゼミなど)の割合も尋ねる予定です。一方、身に付ける知識や能力は「人に分かりやすく話す力「外国語の力」「多様な人々と協働する力」など幅広い項目について、どれくらい大学教育が役立っているかを4段階で評価してもらいます。

社会に対しても説明責任を果たす

文科省では、各大学の調査結果を公開することにより(1)高校生や保護者は、学生目線の情報を踏まえた進路選択が可能になる(2)社会にとっては、学生目線から大学教育が可視化された情報が取得でき、大学教育への理解が進む(3)学生にとっては、大学教育の改善に参画できるようになるとともに、自身もさらなる学びへの意欲が促進される(4)国は、政策立案に活用できる(5)大学にとっては、社会に対する説明責任を果たすとともに、よりよい教育を提供するための学内的な検討や、外部から評価を受けるための客観的データとして活用できる……といった幅広い成果を期待しています。将来的には大学ポートレートにも掲載したい考えです。

世界的に信頼の高い大学ランキングを発表しているタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)の「THE世界大学ランキング日本版」2019年版でも先ごろ、初めて学生調査を加味したランキングを発表しました。日本版は主に大学の「教育力」を評価することを目指しており、やはり学生の生の声が不可欠だとの考えがあります。

その大学がいくら良い教育を行おうとしても、それが学生にも伝わり、実際に社会で役立つ能力が付かなければ、何にもなりません。全国学生調査の実施によって、個々の大学の改善はもとより、大学全体の教育の底上げが期待されます。

(筆者:渡辺敦司)

※学生調査について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/__icsFiles/afieldfile/2019/06/18/1418071_12_1.pdf

※大学ポートレート
https://portraits.niad.ac.jp/index.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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