「探究」が変える!高校の授業と大学入試

政府の教育再生実行会議が普通科の改革を提言するなど、高校の在り方が問われています。ただ高校教育に関しては現在、2022年度入学生から実施となる新しい高校学習指導要領に向けた準備が進んでいます。とりわけ総合的な学習の時間が「総合的な探究の時間」に名称変更され、各教科等でも「地理探求」「理数探究」といった新科目が創設されるなど、「探究」がキーワードになっている感があります。
一方で20年度からに迫った大学入試改革では、思考力や主体性なども含めた入学者選抜が大学側に求められています。社会で求められる幅広い学力を育てるための高校教育と大学入試は、どうあればいいのでしょうか。

進む授業改善、大学側も評価を

示唆的なパネルディスカッションが先ごろ、兵庫県西宮市内でありました。大学入試センターが主催する「全国大学入学者選抜研究連絡協議会」(入研協)の大会2日目午前に行われた全体会2「高等学校における学びの現在(いま)と未来(これから)」です。

パネリストの一人で、全国の総合学習や探究活動に詳しい廣瀬志保・山梨県立吉田高校教頭は、人工知能(AI)が人間の能力を上回ると予測されるような将来の社会を担っていく高校生たちに、どのような教育が必要かを高校教員も自覚しながら「探究」をはじめとした授業改善に取り組んでいると紹介。総合的な探究の時間でも、いっそう教科学習と関連付けながら探究の質を高めることが必要だと指摘しました。
もう一人のパネリストである柴浩司・大阪府教育庁教育振興室副理事は、自身も校長を務めた大手前高校をはじめ府立の「トップテン」が率先して全教科で探究的学習を推進してきたことを報告しながら、大学側に「(高校での)『学びの転換』は確実に進んでいる。知識・技能に裏打ちされた思考力・判断力・表現力や主体性等を評価していただきたい」と要望しました。

主体性等を関係者一体でどう伸ばすかが課題

2020年度から本格的に始まるとされる「高大接続改革」では21年1月から大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に衣替えすることが注目されていますが、高大接続改革はあくまで高校教育、大学教育、大学入学者選抜を三位一体で改革するものであること、そして入学者選抜改革は、共通試験だけでなく各大学の個別試験も含め、受験生が高校で身につけてきた「学力の3要素」((1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力(3)主体性・多様性・協働性)をすべて評価して入学者を選び、大学でさらに伸ばすためのものであることを、見逃してはいけません。
同日午後に行われた全体会3のテーマは、まさに「大学入試における主体性評価手法」でした。会場となった関西学院大学は、文部科学省からの委託を受けて主体性等評価の在り方を他大学と一緒に検討し、高校生活の活動を記録・振り返りできる高大接続ポータルサイト「ジャパンeポートフォリオ」(運営:一般社団法人教育情報管理機構)の稼働につながっています。

高校の探究活動などで培った思考力や主体性など幅広い学力をどう評価して伸ばし、ますます変化の激しくなる今後の社会で大いに活躍できるような子どもたちにしていけるか。それこそが高大接続改革で問われていることであり、高校と大学の関係者、そして社会が一体となって改革を進めていく必要があると言えます。

(筆者:渡辺敦司)

※全国大学入学者選抜研究連絡協議会(入研協)
https://www.dnc.ac.jp/research/nyukenkyou/index.html

※高大接続改革(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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