新入社員に求められる「グローバルな人材」とは?

ニュースなどをチェックしていても、「グローバル化」という言葉が見られない日はありません。既に社会や経済のすみずみまで国境を越えた交流が進んでいることは、保護者世代も実感していることでしょう。とりわけ入国管理法が改正され、国内でもますますグローバル化が進んでいくことは必至です。そんな時代に出ていく子どもたちには、どんな能力が求められるのでしょうか。

1位は「コミュニケーション能力」

独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「日本企業のグローバル戦略に関する研究」と題する調査結果を公表しました。対象は、東京証券取引所一部・二部に上場する2,608社です。その中に、「新入社員に必要な要素・資質」という項目があります。

それによると、「コミュニケーション能力」が82.5%に上りました。いわゆるコミュ力は職業生活一般でも不可欠で、企業が学生に求める能力としても首位に挙がることが多いものですが、異文化や異言語を背景とした人を相手にしなければならない場合なら、なおさらでしょう。
これに負けず劣らず、「チャレンジ精神」(78.9%)や「主体性・積極性」(77.2%)が高いのも注目されます。この他、「責任感・使命感」(67.8%)、「協調性・柔軟性」(61.4%)、「英語の能力」(55.0%)などが多く挙がっています。
同機構では、「主体的にチャレンジしていくこと、その際、コミュニケーションを取れる能力を持つこと、責任感・使命感をもって業務に携わることが、より長いスパンでも重要と認識されている」とみています。

英語だけでない「資質・能力」を学校で

教育面でのグローバル化対応といえば、小学校英語の教科化(高学年)や、大学入学共通テストの英語資格・検定試験活用が注目されています。ただ、それらも以前から学習指導要領で、外国語を通した「コミュニケーション能力」の育成を重視している延長線上にあることを見逃してはいけません。新指導要領でも、小・中・高の一貫した学びを重視して外国語能力の向上を図る目標を設定し、目的や場面、状況などに応じて外国語でコミュニケーションを図る力を着実に育成することを目指しています。
また英語だけでなく、▽発達の段階に応じた語彙(い)の確実な習得、意見と根拠、具体と抽象を押さえて考えるなど、情報を正確に理解し適切に表現する力の育成(国語)▽実験レポートの作成、立場や根拠を明確にして議論することなど(各教科等)……など、学校教育全体で言語活動の充実を図ることにしています。

「社会に開かれた教育課程」を通じて、知識・技能はもとより、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等という「資質・能力の三つの柱」をバランスよく育成しようという新指導要領も、実は、これから先行き不透明な社会で働くためにも必要になる力の基礎を学校時代から身に付けてもらおう……という考えから来ています。そして、高校までに身に付けた3要素を大学教育でさらに伸ばして社会で活躍できる人材を送り出すことが、大学入試改革も含めた「高大接続改革」の目的です。
小学校から大学までを通じて、社会人として企業から評価され、個人としても満足な活躍をして自己実現を図れるような子どもたちを、ぜひ育てていきたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※日本企業のグローバル戦略に関する研究
https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/190.html

※学習指導要領「生きる力」(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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