入試改革、個別大学も変わる!

2019年度に入り、「大学入学者選抜改革」が始まるとされる20年度まで、あと1年となりました。大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」(実施は2021年1月)に衣替えすることが注目されていますが、各大学では「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)すべてを評価して入学者を選抜するという改革の趣旨を見逃してはいけません。個別大学の入学者選抜は、どう変わるのでしょうか。

教科別など5分野で研究成果

文部科学省は、個別大学の入学者選抜で「思考力等」や「主体性等」の評価を効果的・効率的に推進しようと、2016年度から3年間、大学のコンソーシアム(共同事業体)5グループに委託して、研究を行ってもらいました。
テーマは、(1)人文社会分野(国語科)=北海道大学など(2)同(地歴・公民科)=早稲田大学など(3)理数分野=広島大学など(4)情報分野=大阪大学など(5)主体性等分野=関西学院大学など(大学名はいずれも代表校)です。3月、同省講堂で成果報告会が行われました。

このうち国語では、学力の3要素に基づく具体的な資質・能力を「文法適用」「情報抽出」仮説形成」「心の育成」など18項目に細分化。さらに、設問形態も「言語文化」「文章構造」「目的と状況」「図表分析」など20項目に分類し、これらを横軸と縦軸に取って18×20=360マスの一覧表を作り、旧7帝大など20大学で過去に出題された問題の小問がどこに当てはまるかを分析しました。すると、問われているのは「知識・技能」に集中しており、「学びに向かう力」(学力の3要素では主体性・多様性・協働性に相当)は、まったく問われていないことが「見える化」されました。北大の鈴木誠教授は、出題されていない資質・能力と設問形式(行動理由、人物像と関係、自分の考えなど)が「新傾向問題の狙いどころだ」と指摘しました。

電子情報も加味し幅広い学力を評価へ

「主体性等」に関しては、既に高大接続ポータルサイト「ジャパンeポートフォリオ」(Jep)が稼働しています。高校生が1年の時から専用サイトに学習や学校外活動などの成果を、作品も含めて書き込めるようにしました。
大学側は、入学希望者の成長の後を見て、入学後の「伸びしろ」を推測できるというわけです。2019年度入試に活用したのは10大学にとどまっていますが、入学後の追跡調査に使う大学は3月11日現在で112大学・短大に上り、高校生の利用も3,286校の17万5,572人に広がっています。

各コンソーシアムでは研究と並行して各地域で普及を図ってきましたが、やっと成果がまとまったという段階です。また研究の内容も、2022年度入学生から実施となる高校の新しい学習指導要領を視野に入れたものが多く、2021年度入試からすぐに導入できるというものではないようです。

しかし学力の3要素すべての評価は、2021年度入試から迫られます。各大学では、徐々に模索が進んでいくことでしょう。一つの弾みは、新指導要領で学んだ高校生が大学を受験する2025年度入試(現在の中学校1年生が対象)とみられます。文科省の担当者も、高校の調査書を2022年度までに電子化したい考えを明らかにしました。

大学「入試」が、今のまま続くことはあり得ません。入学後の大学教育も視野に入れて、高校までの教育で幅広い学力を付けようとする姿勢が、これからの受験生には求められます。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入学者選抜改革推進委託事業成果報告会
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1413650.htm /

※ジャパンeポートフォリオ
https://jep.jp/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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