これからの有力大に文理の区別なし!?

受験シーズン真っ盛り。受験生ならずとも、文系にしようか理系を選ぼうか……などと思いを巡らせているお子さんも少なくないのではないでしょうか。しかし、これからは「文系」「理系」という分け方も、徐々に意味をなさなくなるかもしれません。文系と理系を融合させるべきだという提言が相次いでいるからです。

「科学技術」の対象に人文・社会も

「科学技術」というと、完全に理系の話だと思う人が多いことでしょう。
しかし国の科学技術政策の司令塔役である内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」の有識者議員懇談会(いわゆる木曜会合)では、「人文科学のみに係るものを除く」と規定されている科学技術基本法を改め、次の第6期科学技術基本計画(2021年度から5年間)に人文・社会科学を対象に加えるべきだという議論が起こっています。

科学技術をめぐっては近年、人工知能(AI)や生命科学に代表される通り、向かうべき方向性や倫理の問題など、人文・社会科学の知見が必要な課題がますます増えています。「第4次産業革命」「Society5.0」などと呼ばれる時代にイノベーション(技術革新)を生み出すためには、自然科学と人文・社会科学を連携させた新領域を開発しなければならない、という意見もあります。

文部科学省では昨年6月、大臣懇談会の省内タスクフォース(特別作業班、TF)がまとめた報告書の中で「文理分断からの脱却」を掲げました。文科相の諮問機関である科学技術・学術審議会(科学審)は昨年10月、学術分科会に「人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループ」を設け、12月に「審議のまとめ」を行っています。

入学後はもとより入試の変化も必至

こう紹介すると、「何だ、研究分野の話か」と思うかもしれません。しかし、先の文科相TF報告書は、小・中・高校も対象にしたものであることを見逃してはいけません。

そもそも大学では、教育と研究が一体で行われています。世界的にも卓越した研究を目指す有力大学であればあるほど、科学技術をめぐる動向に敏感です。研究分野で文理融合が進めば、どの学部の学生にも文系、理系の両方の素養を求める傾向が強まることは必至です。

高校教育・大学教育・大学入学者選抜を一体とした「高大接続改革」の下、入学後のカリキュラムはもとより、入試でも文系・理系にとらわれず科目を課す大学が今後、増えてくることが予想されます。文理を融合させた学部の創設も、続出することでしょう。
高校では2022年度入学生から、新しい学習指導要領が全面実施となります。「理数探究」が創設される他、総合的な学習の時間を衣替えした「総合的な探究の時間」でも、文理の枠を超えたテーマの探究が活発になることでしょう。

早稲田大学の政経学部が、2021年度一般入試から「大学入学共通テスト」の数学Ⅰ・数学Aを課すとともに、理科も含めて選択科目に加えることが大きな話題になりました。文系学部でも理数系の素養が求められていることの証左です。
そもそも科学を文系と理系に分け、進路まで左右されるのは、日本ぐらいです。「文系(理系)に進むから理系(文系)科目は捨てる」などと言っていては、有力大学への合格も危うくなる時代が迫っているのかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/index2018.html

※文部科学省 Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会
http://www.mext.go.jp/a_menu/society/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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