「内向き志向」の大学進学でいいの?

大学入試センター試験も、あと1カ月。
後継の「大学入学共通テスト」も試行調査(プレテスト)が行われるなど、受験生ならずとも大学入試が気になる季節に突入しています。ただ、大学は入試を突破すればいいというものではありません。入学後にどういう勉強をし、どういう能力を身に付けて社会で活躍したいかも、しっかり考えて志望校を選択する必要があるでしょう。
そんな中、今どきの大学生の意識として気になるデータもあります。

他者との関わりへの興味が低下

主要な私立124大学が加盟する日本私立大学連盟は3~4年に1度、「学生生活実態調査」を実施し、結果を「私立大学学生生活白書」にまとめています。2018年版の白書によると、第15回調査(2017年9~10月、122大学の学生を対象に実施)の特徴として、1998年から前回(14年10月実施)まで着実に増加していた「所属学部・学科の満足度」や「学生生活の充実度」が、共に減少に転じた点にあるといいます。

その背景について白書では、学生が「大学の勉強」や「資格の取得」など実利面を重視する一方で、人間関係形成や課外活動への参加など他者と関わることへの興味が低下するという「実利志向化」「内向き志向化」が影響していると分析しています。
実際、所属大学の選択理由(三つまで)として「就職に有利だと思ったから」(前回17.6%→今回21.1%)が跳ね上がり、大学生活の中で大切だと思っていること(同)でも「専門的知識・技術を習得すること」(同26.7%→30.4%)や「よい成績をとること」(同15.5%→19.2%)がますます伸びているのに対して、「よい友人・先輩を得ること」(同25.4%→20.6%)や「クラブ・サークル活動で活躍すること」(同7.1%→4.3%)は減る一方です。

企業はコミュニケーション能力や人間性も求める

そうは言っても大学は勉強しに行くところであって、自立して社会で活躍できるようになるためにも就職に有利な大学を選択するのは当然じゃないか……とも思えます。
しかし現在、社会から求められている資質・能力は、昔のように大教室で一斉講義型の授業を受けて単位を積み重ねれば自然と身に付くというものでもありません。
たとえば経団連は、これからの時代は多様性を持った集団の中でリーダーシップを発揮することが重要だとして、そのためには「異なる文化に対する深い理解と敬意、新しい価値を想像し創造する力など高いリベラルアーツの素養と、コミュニケーション能力、メンバーから尊敬され得る深い専門性と人間性を兼ね備えることが必須である」と指摘しています。

そんな社会や企業の期待に応えるため、各大学も改革を進めています。大学改革では「三つの方針」の策定が義務付けられていますが、まずはその大学が社会に送り出す卒業生像(ディプロマ・ポリシー=DP)を明確にしてから、教育課程の方針(カリキュラム・ポリシー=CP)を定め、それに見合う学生を受け入れるための入試方針(アドミッション・ポリシー=AP)を決める……というように、入学から卒業まで一貫した方針を取ることが求められています。幅広い能力を付けさせるための手法であるアクティブ・ラーニング(AL、大学教育では「能動的学修」と訳す)の導入も急務です。

先ごろ中央教育審議会が答申をまとめたように、約20年後の社会に向けて各大学は、ますます改革を進めていくことが必至です。これから入学しようとする者にも、変わる大学に対応する心構えが求められます。

(筆者:渡辺敦司)

※私立大学学生生活白書2018
http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/support_c/2018/09/25/22828


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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