医学部の入学定員、どう考えるか

東京医科大学が文部科学省幹部の息子を不正に合格させていた汚職問題をきっかけに、医学部の入試不正問題がクローズアップされています。
国公私立80大学でつくる全国医学部長病院長会議は、性別や浪人年数で受験生を不利に扱わないようにするなどの規範を策定しました。医学部の入学定員をめぐっては、特定の都道府県で地域医療に携わることを前提とした「地域枠」の在り方も課題になっています。医学部の定員を、どう考えればいいのでしょうか。

「地域枠」などで1,000人以上の増

医学部の定員は、普通の学部と違って、国が医師の需給動向を見通して増減を決める「計画養成」が行われています(他に歯学部なども)。医師の数は、国民の健康的な生活はもとより、社会保障費にも大きな影響を与えるためです。
ピーク時には8,280人あった入学定員も、医師が過剰になったとされる1985年度以降は徐々に削減され、2003年度からは7,625人となっていたのですが、都市部への偏在による地域での医師不足の深刻化を受けて、08年度からは地域枠などの形で定員の拡充などが図られてきました。2019年度までは恒久定員8,409人(新設2大学の240人を含む)、臨時定員1,010人の計9,419人とされています。
地域枠には、一般枠と違う定員を設ける「別枠方式」だけでなく、入学後に募集する「手挙げ方式」もあります。さらに、別枠方式にも(1)先行して地域枠を選抜してから一般枠を選抜する「先行型」 (2)地域枠希望者を一般枠とは区別して選抜する「区別型」、手挙げ方式にも(1)選抜に先立って地域枠の希望を募る「事前型」 (2)入学後に希望を募る「事後型」……という類型があります。
そうなると、地域枠のために拡大したはずの定員が、一般枠に化けてしまうような運用もあり得ます。また、地域枠で入学した学生には奨学金が給付される代わりに一定期間その地域で働くことを条件にする形が一般的ですが、途中や卒業後に辞退して奨学金を返還してしまえば何にもなりません。厚生労働省によると、既に別枠方式で7%、手挙げ方式で18%の「離脱」が出ており、今後は各大学に別枠方式を要請するなどの対策を講じるとしています。

重い社会的責任

一方、医学部の合否判定をめぐっては、一部の大学で女子や浪人生に差を付けたり、募集要項には記載がないのに同窓生を優遇していたりしている不正な実態が、文部科学省の緊急調査から明らかになっています。柴山昌彦文部科学相は、不適切な可能性の高い取り扱いについて各大学に公表や受験生への丁寧な説明とともに、公正な入試となるような見直しを求めています。
どのような学生を受け入れて教育するかは、大学の裁量に委ねられているのも事実です。全国医学部長病院長会議の規範にしても、違反すれば同会議から除名処分となるものの、強制力はありません。

しかし普通の学部と違って、医学部定員は国の計画養成の下に置かれているということも忘れてはなりません。医学部受験の在り方は入試全体への影響が大きいのも実態です。不正を行った一部の大学には、その重い社会的責任を十分に自覚してほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※全国医学部長病院長会議の規範
https://www.ajmc.jp/pdf/20181116_01.pdf

※厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第23回)配布資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208863_00003.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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