授業のICT活用はどこまで進んだ?

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学校では、1人1台のタブレット端末を使う機会がだんだんと増えてきています。国の政策により、教室の情報通信技術(ICT)環境がここ数年で大きく改善したためです。整備された環境をさらに生かし、子どもたちの学びにつなげるためには、どのような課題があるのでしょうか。

この記事のポイント

初めて1台当たり「1人」を切る

文部科学省の調査によると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、2022年3月1日現在で0.9人でした。20年は4.9人にとどまっていましたが、新型コロナウイルス感染症による休校措置を経た21年は1.4人と、1人1台の環境が急速に整っていき、今回初めて1を割り込みました。
教室の無線LAN整備率も、2020年48.9%→21年78.9%→22年94.8%と、年を追うごとに上昇。インターネット接続率は99.4%となり、ほぼ普通教室でネットワークに接続してコンピューターが使えるようになりました。教室での大型ディスプレーや先生が使うコンピューター、デジタル教科書の整備率も上昇しています。

「GIGAスクール構想」でやっと加速

この結果には、2019年に国が始めた「GIGAスクール構想」が大きく影響しています。当時の日本は、授業でデジタル機器を使用する時間が、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、最下位でした。これを打破しようと、1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するための予算が組まれたのです。
さらにコロナ禍で学校が一斉休校となり、オンラインによる学習の必要性が高まったことを受け、実施計画が前倒しされました。こうして2021年度中、急速に1人1台の整備が進んでいったのです。

活用やまとめを指導する力に課題も

ただし、先生がICTを活用して授業を行う指導力には、ばらつきも見られます。
調査では16項目で4段階の自己評価をしてもらっていますが、「できる」「ややできる」と回答した先生で、割合の高い項目としては、授業に必要なプリントや提示資料を作るためにICTを活用する力(91.6%)、ルールやマナーを守って情報収集や発信できるように指導する力(87.8%)、コンピューターを使って資料を効果的に提示して子どもの関心を高めたり課題をつかませたりする力(86.2%)などとなっています。
一方、子どもがグループで話し合ったり協働してレポートを作ったりするときにコンピューターやソフトウェアを効果的に活用させる力(68.5%)、子どもが表計算ソフトやプレゼンソフトなどを活用して考えを整理したりまとめたりできるように指導する力(72.7%)など、アウトプットにつながる指導力は、前年に比べて伸びてはいるものの、項目全体の中では割合が低くなっています。

まとめ & 実践 TIPS

GIGA端末が使われ出した2021年度は、発表や話し合いにICTを活用するところまで至らなかったケースがあったのも仕方のないところです。ただし今の学習指導要領は、知識や技能だけでなく、思考力や判断力、表現力を伸ばすことなども目指しています。子どもたちのアウトプットの力を伸ばせるような活用や指導の浸透が求められます。

(筆者:長尾 康子)

※文科省 2021年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00026.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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