未来のスペシャリストを育てる高校って?

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全国の高校では2022年度から、新しいカリキュラムの下、探究型の学習が本格的に始まっています。高校を取り巻く社会情勢が変化する中、工業や商業などを学ぶ「専門高校」でも、新しい取り組みが活発に行われています。

この記事のポイント

専門高校が進化

高校進学の際、どのような学科やコースに子どもを進学させたらよいか迷う保護者のかたも少なくないのではないでしょうか。進学率が約99%となり、高校に通うのが当たり前のようになった今、その教育内容も多様化しています。
専門教育を行う学科を置く専門高校でも、近年の技術革新やグローバル化に伴い、企業や地域社会と連携し、生徒を直接関わらせながら学ぼうとするところが出てきました。その一端を、文部科学省が公表した「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の成果から見てみましょう。

マーケティングを1年生から

愛知県立愛知商業高校では、ビジネスの視点で地域課題の解決を目指すカリキュラムを開発しています。1年生から「マーケティング基礎講座」の科目を設けたり、名古屋の食文化「きしめん」を広めるため、他の商業高校や大学と連携して「きしめんチップス」の商品開発に取り組んだりしています。生きたビジネスを学ぶことで、愛知県全域の課題をビジネスの視点でとらえ、地域ビジネスを展開できる人材を育てるのが狙いです。

システム思考やデザイン思考も学ぶ

自動車や航空宇宙、医療機器などの産業に力を入れる栃木県では、県立宇都宮工業高校が、ものづくりの新しい価値を生み出す思考力の育成に力を入れています。複数の物事を組み合わせて新しい製品やサービスを発想する「システム思考」や、試作品を作って機能や操作性を検討する(プロトタイピング)「デザイン思考」を学びます。その2つを組み合わせて制作した椅子が県内の発明コンテストで金賞を受賞するなど、身近な課題を解決するアイデアの創出につながっているといいます。

福岡県立香椎高校のファッションデザイン科では、「商品企画演習」で生徒が企画・制作した商品をネット上で販売する授業を通して、アパレル業界の仕組みを実践的に学んでいます。学生服メーカーが実際に開発した新商品を例に、商品企画の流れや、ターゲットをどのように設定していったかを学んでいます。さらに、ファッション分野以外の商品についても分析をしたうえで新商品の開発に取り組むという、リアリティーのある授業をしています。

まとめ & 実践 TIPS

地域の大学や企業、行政がバックアップする取り組みは、学校の中だけではできない現実に近い体験ができるという点で、新しい高校の新しい在り方と言えそうです。地域の産業の課題を知って、将来は地元に貢献したいという生徒も出てくるかもしれません。
ただし高校の勉強は、あくまで生徒が主体です。新学習指導要領が目指す思考力や判断力、表現力が伸ばせるようなプログラムが充実してこそ、自分の適性を知り、主体的に未来を考えられる、真のプロフェッショナルが生まれるのではないでしょうか。

(筆者:長尾 康子)

※文科省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1420961_00015.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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