お金の知識や判断力、誰がどう高める? 生活スキルとしての金融教育

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金融に関する広報活動を行う「金融広報中央委員会」の調査によると、投資に関心を持つ若者が増えています。しかし、具体的な知識が十分ではない現状も見えてきました。中学校や高校でも、金融に関する教育が行われています。しかし教材不足など、さまざまな課題も抱えています。お金の知識や判断力を、どのように高めていけばよいのでしょうか。

この記事のポイント

若者の関心は高まっているけれど

調査は2022年2月から3月にかけて、全国の18~79歳の個人3万人を対象に、インターネットを通して行われました。金融に関する正誤問題と、お金にまつわる行動特性や金融全般に関する自己評価を、53問出題。その結果から、お金の知識や判断力である「金融リテラシー」を見ようというものです。
前回調査と比べると、18~29歳の若年社会人で、金融への関心が高まっていることがわかります。「お金について長期計画を立て、達成するよう努力している人」の割合は2019年では47.7%でしたが、今回は52.1%に増えています。「株式を購入したことがある人の割合」は18.2%→29.1%と、大きな伸びが見られました。
一方で、他の年代と比べ、お金に関する知識が不足しているだけでなく、望ましい行動を取れる人の割合が少ないことも明らかになりました。金融に関する正誤問題の正答率を見てみると、18~29歳は41.2%と、他の年代に比べて低水準です。30代の正答率は48.8%、50代では58.6%と、年齢が高くなるにつれ高くなっていきます。

知識があるつもりでも実際には…

金融についての実際の知識(客観的評価)と、自己評価のギャップも、若年層の課題です。正答率や回答を指標化して比べたところ、ギャップが最も大きいのは18~29歳でマイナス18.5ポイント、30代はマイナス6.5ポイント、40代は1.7ポイントとなっています。ギャップがマイナスになるのは、自己評価が客観的評価を上回っていることを示します。
つまり、自分が思っているほど知識がないのが、若者の特徴です。インターネットで投資に関する情報収集や、金融商品の購入が容易になる中で「よく知らないまま買ってしまった」ということも懸念されます。

学校で教える先生も不安

ギャップ解消を期待されているのが、学校での金融教育です。新学習指導要領では、成年年齢の18歳引き下げに伴い、高校の家庭科や公共などで、金融の内容が拡充されました。中学校社会科の公民分野でも、その基礎を取り扱うことになっています。
しかし現場で教える先生には、不安も大きいようです。必要性は感じていても、新しい内容だけに「正しく知識を教えられるか自信がない」「特定の商品を紹介するように受け止められないか不安」といった声も、よく聞かれます。
金融庁や関係団体などは、教材や動画などを作成して、学校向けに提供しています。それでも限られた授業時数の中では、十分に活用できていないケースもあるのが現状のようです。

まとめ & 実践 TIPS

調査では、生活設計や家計管理についての金融教育を受けた人は、どの年代でも金融知識の正答率は高くなり、望ましい行動をとる人の割合も高いとしています。金融庁は「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」は、小学生から高齢者まで全年齢層に必要だとしています。
学校だけに金融教育を任せるのではなく、社会全体で意識を高めていくことが求められます。

(筆者:長尾 康子)

※金融広報中央委員会 金融リテラシー調査(2022年)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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