【2022年版 子供・若者白書】子どもが「ほっとできる」場所はどこに?

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政府は先頃、2022年版の「子供・若者白書」を決定しました。それによると、自己認識の「前向きさ」は、居場所や相談できる場・人の数などと関係があります。子どもたちを取り巻く状況は劇的に改善しているわけではないことから、引き続き手厚い支援が必要だと言えるでしょう。

この記事のポイント

白書では「こども家庭庁」設立を特集

今回の白書は、2021年度の子どもや若者に関する調査をまとめたものです。
特集では、2023年4月1日に発足予定の「こども家庭庁」について解説。設立に向けた有識者会議の報告書や「こどもに関する政策パッケージ」の取り組み事項を紹介しています。
また、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の下での学校や高校・大学入試、大学や高等専門学校の対応の推移も整理しており、教育機関の動きがわかります。

今の子どもを巡る状況も調査

巻末には、子どもや若者支援の施策を、より多くの人たちが多面的に評価できるよう、子どもにまつわる各指標を可視化した「インデックスボード」が添えられています。それによると、子どもたちを取り巻く状況は改善された面もあれば、そうではないところもありました。
子どもや若者の意識について「今の自分が好きだ」という自己肯定感は、2016年度が44.8%だったのに対し、2019年度は46.5%と増加しており、改善傾向が見られます。しかし、「今の生活が充実している」という今の充実感に関しては、2016年度の69.6%から2019年度は68.9%に、「自分の将来について明るい希望を持っている」という将来への希望も61.6%から59.3%に低下しています。
ほっとできる場所、居心地のよい場所である「居場所」については、「自分の部屋」「家庭」「学校」「地域」「職場」「インターネット空間」のすべてで、数値が減少しています。一方、「どこにも居場所がない」は、2016年度が3.8%でしたが、2019年度は5.4%に上昇しています。
「相談できる人」がいる場所に関しては、「地域」「職場」「インターネット空間」でわずかな増加が見られるものの、「家庭」や「学校」では横ばいにとどまりました。
居場所の数が多いほど「自己肯定感」や「チャレンジ精神」、「将来への希望」「社会貢献意欲」が高まる相関関係も、浮き彫りとなりました。居場所の数が1つだと、将来への希望を感じる割合は34.3%だったのに対し、3つだと54.3%、6つだと78.5%と上昇していきます。

検挙された児童虐待数は過去最多に

貧困や虐待などの状況は、どうでしょうか。
子どもの貧困率は、2012年度の16.3%から、2018年度に13.5%へと改善しています。児童生徒の自殺者数は、2020年度に499人と過去最多になりましたが、2021年度は473人に減少しています。
一方、児童虐待に関しては、警察が2021年度に検挙した児童虐待事件の件数は2020年度を上回り、2,174件と過去最多を更新してしまいました。

まとめ & 実践 TIPS

白書では、子どもの居場所づくりの例として「子ども食堂」を運営する民間団体を紹介したり、オンラインを活用した相談体制の確保に取り組んだNPOを取り上げたりしています。
「どこにも居場所がない」と感じる子どもが増えている今、「こども家庭庁」への期待は高まるばかりです。学校や家庭だけでなく、地域やネット空間にも多様な居場所を作り、子どもたちのセーフティ—ネット(安全網)を広げていくことが課題と言えそうです。

(筆者:長尾 康子)

子供・若者白書について(旧青少年白書)
https://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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