中学生の17人に1人…「ヤングケアラー」って?

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「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもの存在を、ご存じでしょうか。国の調査によると、家族の中に世話をしている人が「いる」と答えた中学生は、17人に1人を占めます。
年齢に見合わない家事や介護の負担は、勉強や健康面などに影響を及ぼすことから、早期の支援が望まれます。独自に実態を把握し支援に乗り出す自治体も増えています。

この記事のポイント

1日4時間を費やす

ヤングケアラーとは、家族のために大人がするような、家事や家族の世話などをしている18歳未満の子どもを指します。

▽病気や障害がある家族のために食事の用意や洗濯、掃除をする▽家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている▽目が離せない家族の見守りや気遣いをしている▽日本語が第一言語でない家族のために通訳をしている……などです。

厚生労働省の事業として2020年度、全国の中学2年生約5,500人、高校2年生(全日制、定時制、通信制)約8,000人を対象に行った調査(※1)によると、中学生の5.7%が世話をしている家族が「いる」と回答しました。高校生では、全日制で4.1%、定時制で8.5%、通信制で11.0%の生徒が該当。「いる」と答えた中高生の約半数が「ほぼ毎日」世話をしていると回答しています。平日1日当たりの時間は、中学生が平均4.0時間、全日制の高校生で平均3.8時間でした。

学業や友人関係にも影響

「家族で助け合うのはよいことだ」と思うかもしれません。しかし、それが毎日、何か月、時には何年も続けば、子どもが受ける影響は大きくなります。

勉強や睡眠の時間、友達と遊ぶ時間などが十分に取れなくなったり、ストレスや孤独を感じたりして、学業や友人関係などに影響が出てしまうこともあります。

この問題を議論した政府のプロジェクトチームは、ヤングケアラーの現状と課題について▽家庭内のデリケートな問題であり、本人や家族の自覚が薄くなりがちで表面化しづらい▽支援が必要な子どもがいても、周囲の大人が気付きにくい▽支援につなぐ窓口が明確でない……などと指摘しました。

政府は2022年度から、早期発見や支援策として、実態調査や関係者の研修の充実、関係機関と支援団体とをつなぐ「ヤングケアラー・コーディネーター」の配置などを行うことにしています。

学校で気付くポイントをサイトに

その一環として、ヤングケアラー支援に関する啓発も積極的に行うとしています。
2022年1月に開設した特設サイトでは、ヤングケアラーとは何かがわかりやすく解説されています。中でも「教育関係者の方へ」として、早期発見のポイントや、ヤングケアラーかもしれない子どもとの関わり方、他機関との連携の進め方、相談窓口などを掲載しています。

まとめ & 実践 TIPS

埼玉県では、全国に先駆けて条例を制定してヤングケアラー支援に乗り出しているほか、全国的にも自治体による実態調査などが始まっており、2022年度はヤングケアラーの存在や支援について広く考える年となりそうです。

ただし、病気や障害を抱える家族と一緒に住んでいるからといって、その子がヤングケアラーだという決めつけは禁物でしょう。教育関係者だけでなく周囲の大人も、その子どもの声に耳を傾け、一人ひとりにとって何が必要かを考えることから、ヤングケアラーを理解していきたいものです。

(筆者:長尾康子)

※1 ヤングケアラーの支援に関する令和4年度概算要求等について
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000831374.pdf

※厚労省 子どもが子どもでいられる街に。~みんなでヤングケアラーを支える社会を目指して~
https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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