高校生の約半数がコロナ禍で無気力に 進学や就職、将来の社会生活が不安の声も

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新型コロナウイルス感染症は、子どもたちの生活や学習環境に、大きな変化を与え続けています。
特に、進学や就職を控えた高校生や大学生の間では、無気力になったり、孤独を感じたりするなど、精神的な苦痛を抱える若者が一定数いることがわかりました。
どのような心理状態になっているのでしょうか。

この記事のポイント

「無気力」や「孤独」も

日本赤十字社は、国内で初めての感染者が確認されてから約2年となる2021年12月、全国の高校生、大学生(院生を含む)、保護者、教員の計600人を対象に、インターネット調査を実施しました。
20年4月の緊急事態宣言から21年9月の宣言解除までの間に起きた、若者の心の変化を明らかにしています。

調査の結果、「何もしたくなくなる、無気力」と回答した高校生が43.0%、大学生が49.0%と、約半数に上りました。「孤独を感じる、1人でいるのが不安になる」は各28.0%、35.0%となっています。

また、「悲しい気持ちになる、涙が止まらなくなる」(高校生23.0%、大学生25.0%)、「自分に価値を感じない、他者から必要とされない」(各27.0%、20.0%)、「生きていることに意味を感じない、死ぬことを考える」(各18.0%、11.0%)など、精神的につらい状況にある若者も一定数存在しています。

進学や就職、人間関係に及ぶ不安

進学や就職への不安も小さくありません。「受験や就職活動で苦労するのではないか」(各42.0%、33.0%)、「進学先や就職先で評価されないのではないか」(各21.0%、31.0%)などが、高い割合となっています。高校生は、学習面での不安が、大学生より高いこともわかりました。

将来の社会生活に対する不安では、「新しい人間関係を構築することが難しいのではないか」(各30.0%、33.0%)、次いで「対人コミュニケーションスキルが身につかないのではないか」(各30.0%、27.0%)」などが挙がっています。

親や先生に不安を打ち明けず

こうした不安への対処方法として、「保護者と話し合った」は高校生15.8%、大学生23.5%、「学校の先生と話し合った」は各15.8%、11.8%と、低い割合にとどまります。

これらに対して、「『何とかなる』とできるだけ楽観的に考えるようにした」(高校生24.6%、大学生30.9%)や「『これも貴重な体験の1つだ』と学びの機会として考えるようにした」(各10.5%、22.1%)のほうが、割合は高くなっています。
「前向き」だと捉えることもできますが、自分だけで対処している姿のようにも見えそうです。

まとめ & 実践 TIPS

調査結果を踏まえて、日本赤十字社医療センターの臨床心理士である秋山恵子氏と関真由美氏が、メッセージを寄せています。

保護者に対しては、話し掛けてきた時にはしっかり聞く態度を示し子どもの安全基地になることを、教職員には、具体的な相談先を伝えることなどを求めています。
さらに、大人の安定が子どもの安定につながることから、保護者や教職員自身のセルフケアも呼びかけています。

家庭や学校での感染が多い第6波が続くなか、改めて、大人も子どもも何か一言、互いを気に掛ける言葉掛けや、呼び掛ける気持ちを持つことが大切ではないでしょうか。

(筆者:長尾康子)

※日本赤十字社『新型コロナ禍と若者の将来不安に関する調査(2021年)』
https://www.jrc.or.jp/press/2022/0106_022802.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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