進路、学習格差、就職など、新型コロナがこれ以上若者の未来に影響を及ぼさないために、社会がすべきこととは?

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新型コロナウイルス感染症が、進学・進路、学習環境など、若者の生き方に影響を及ぼしています。コロナの収束が遠のけば、家庭の経済状況も苦しくなり、若者への影響は長期化する恐れがあります。

この記事のポイント

就職希望業種や入試方法を再考

日本財団が2020年12月に全国の17~19歳の若者1,000人を対象に行った意識調査によると、コロナ禍で自身の進路に影響が「ある」と回答したのは、31.5%でした。

具体的には「就職希望業種の範囲を広げた」(33.3%)、「思ったように成績が伸びず入試方法を変更した」(19.7%)、「進学先の地域を考え直した」(18.7%)、「経済的な事情から受験先などを変更した」(9.2%)、「部活の試合が開催されず、進学に必要な成績が残せなかった」(8.6%)などが挙がりました。

就職や進学を控えた若者に、直接的な影響を与えていることがわかります。

格差の感じ方に開きも

調査では、学習環境の差や格差についても尋ねています。他の人と比べて、学習環境の差を感じたことが「ある」と回答した者は43.4%、「ない」は56.6%でした。

昨年からの新型コロナが、学習環境や進路、進学にどのような影響を与えているかを質問すると、もともと学習環境の差を感じたことがある若者と、そうでない若者とでは、受け止め方や状況が異なることが明らかになりました。

学習環境の差を感じたことがある人では、68.0%が「コロナ禍で学習環境の差が広がった」と答える一方、学習環境の差を感じたことがない人では、41.3%でした。

「教育格差を感じるか」についても、学習環境の差を感じたことがある人は71.4%が「感じる」と回答しましたが、そうでない人は31.6%と、開きが見られます。

進学断念を生まないために

教育格差は、2人に1人が感じると答えています。教育格差の原因としては、「家庭の経済力」(25.3%)、「学校の指導力」(14.9%)、「本人の努力」(12.1%)となっています。

中でも、教育格差を感じる人は「家庭の経済力」(31.7%)や「学校の指導力」(17.6%)と答えた割合が多くなっています。「今後、教育格差は広がると思うか」への回答では、教育格差を感じる人・感じない人で、それぞれ67.1%、36.0%と、約30ポイントの差が開きました。

教育格差を是正するために必要なこととして、「高等教育の無償化などの制度整備」(48.0%)、「無償の学習支援拠点の整備強化」(33.8%)、「オンライン教育の強化」(33.8%)、「家庭と学校のデジタル環境の整備」(30.9%)などが挙がりました(複数回答)。

まとめ & 実践 TIPS

調査の自由記述からは、家庭の経済状態によって、奨学金を借りる必要に迫られたり、進学・進級を諦めざるをえなかったりした本人や、そうした状況を見聞きした若者の声が集まっています。
教育機会が失われることは、その人が将来、社会に出てから生み出す所得が減ることになり、本人のみならず、社会全体の損失を拡大させます。今、格差を感じていない若者や世帯にとっても、他人事ではありません。
新型コロナの影響が若者に与える影響を、限りなく小さくするための支援と、社会全体で支えることへの理解が求められます。

(筆者:長尾康子)

日本財団「18歳意識調査」 第33回テーマ:教育格差について
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210107-52334.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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