[奨学金]借り方、返済のキホン これだけは!子どもが将来「毎月ムリなく返済できる額」を算出してみよう
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学ぶ意欲がある学生が、保護者の家計や資力に左右されず、安心して進学できるように、奨学金の制度があります。ひとことで奨学金と言っても、実施団体は、日本学生支援機構(以下、JASSO)、各大学、企業の出資(民間育英団体)、地方自治体などさまざまです。
今回は、奨学金の借り方、返済の仕方の基本をお伝えします。
奨学金は給付型と貸与型の2種類
奨学金を大きく分類すると、返還の義務がない「給付型」と返還義務のある「貸与型」に分けられます。
2020(令和2)年度より、高等教育無償化政策のひとつ「大学等における修学の支援に関する法律」の施行によって、JASSOの給付型奨学金制度の対象条件が緩和されました。
給付型奨学金は、JASSOのほかに、大学が独自で実施しているもの、民間育英団体により実施しているもの、地方自治体が地元出身の学生を支援する目的で実施しているものなどがあります。
給付型奨学金は、多くの場合、家計基準(家計の収入制限)や学力基準が厳しく、誰でも受給できるわけではありません。ただし、民間育英団体による奨学金には、明確な家計基準のないものもあります。
大学では、新入生を対象にした、受験前あるいは入学手続き前に奨学金の給付が約束される予約型の給付型奨学金制度が増えています。実際に受給するには入学試験に合格することが必要ですが、家計基準が緩やかな場合が多いのが特徴です。
一例を挙げてみましょう。
<予約型の給付型奨学金の例>
<企業(民間育英団体)の給付型奨学金の例>
一方、貸与型奨学金で最も身近で利用しやすい存在が、JASSOの奨学金です。JASSOは、保護者にはなじみのある「日本育英会」が、2004(平成16)年にいくつかの団体と統合されて文部科学省所管の独立行政法人として設立されました。
JASSOの奨学金には、給付型と貸与型があり、貸与型には無利子(第一種奨学金)と有利子(第二種奨学金)のタイプがあります。奨学金の申込者も返還義務者も学生本人です。利用できる基準や金額は下表のとおりです。
JASSO(日本学生支援機構)の貸与型奨学金制度(2021年度)
第一種奨学金または第二種奨学金に加えて、入学した月の分の奨学金の月額に一時金として増額して貸与される奨学金が「入学時特別増額貸与奨学金」です。日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申し込んだけれども利用できなかった世帯の学生を対象としています。なお、入学時特別増額貸与奨学金だけを申し込むことはできず、入学前に貸与されない点に注意して下さい。
奨学金の申込み時期・方法を正確にキャッチしよう
給付型、貸与型を問わず、どの団体の奨学金も年間を通して募集しているわけではありません。それぞれの実施団体のホームページ等の情報を正確に知る必要があります。
JASSOの奨学金は、高校在学中に高校を通して予約することが可能です(予約採用)。大学に入学してから申し込むことも可能(在学採用)ですが、申込期間が入学式直後の数日間しかなかったりして申し込み損ねてしまうケースがあります。高校で予約採用を申し込んでいても、大学入学後に奨学金の必要がなければ辞退できます。少しでも奨学金を利用する可能性があるのであれば、高校在学時に予約採用を申し込んでおくとよいでしょう。
地方自治体が実施している奨学金の多くは「保護者もしくは学生本人がその自治体に居住していること」などが受給の条件です。申込方法も、各自治体に直接申し込む場合や進学した大学を通して申し込む場合など各自治体によって異なります。居住地の地方自治体のホームページをしっかり確認しましょう。
民間育英団体の奨学金は、すべての大学が対象になっているとは限りません。まず受験予定の大学のホームページで確認するのがいいでしょう。
大学のホームページの「奨学金」のページには、各大学独自の奨学金だけでなく、多くの場合、JASSOや民間育英団体、地方自治体実施の募集等の情報が掲載されています。受験前に申し込むのか、合格して入学することが決まってから申し込むのか等、申込時期を逃してしまわないように、子どもが受験する可能性がある大学は、見落としがないようにしっかりと内容を読み込みましょう。
JASSOのホームページでも「大学・地方公共団体等が行う奨学金制度」を検索できます。
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/shogaku_dantaiseido/index.html
貸与型奨学金は「返還できる月額」を考えて申し込もう
貸与型の奨学金は、学生本人が借りて、学校を卒業後、返還しなければなりません。特に有利子の奨学金は、家計基準や学力基準が緩やかで借りられる上限金額も高額な場合が多いようです。子どもが大学を卒業後、どのような職業に就くのか、世の中の経済情勢がどうなっているか、わかりません。JASSOの場合、返還期間は最長20年です。子どもが将来結婚して家庭を持っても「毎月ムリなく返還できる額」を想定しながら、貸与月額を算定しましょう。JASSOのホームページ上の「奨学金貸与・返還シミュレーション」で試算ができます。
JASSO 「奨学金貸与・返還シミュレーション」
https://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/
学校を卒業して返還が始まり、月々の返還期日までに返還できなかった場合は、延滞金が加算されます。そのまま延滞が続くと督促の電話や文書が届き、個人信用機関に延滞情報が登録されることになります。将来、子どもが住宅や車購入の際にローン審査に通らない等の影響が出る可能性があります。
奨学金の返還が困難になった場合、JASSOでは、返還期限の猶予や減額返還などの救済制度があります。返済が困難になったときには、必ず貸与している機関(団体)に相談しましょう。
保護者は、このような返還計画についても子どもと情報共有しておくことが大切です。
まとめ & 実践 TIPS
返還不要の給付型の奨学金制度が少しずつ充実してきたとはいえ、一般的には返還が必要な貸与型奨学金を利用することが多いと思います。奨学金は「学生本人の借金」であることを保護者も子どももきちんと認識し、返済する時のことをしっかり考えて賢く利用しましょう。
【出典】
JASSO(日本学生支援機構)
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/index.html
早稲田大学 めざせ!都の西北奨学金(入試出願前に申請する奨学金)
https://www.waseda.jp/inst/scholarship/aid/programs/pre-approved/
関西学院大学 【2021年4月入学希望者対象】ランバス支給奨学金
https://www.kwansei.ac.jp/students/students_006543.html
明治大学 特別給費奨学金
https://www.meiji.ac.jp/campus/shougaku/juken.html
公益財団法人 キーエンス財団
https://www.keyence-foundation.or.jp/scholarship01/
公益財団法人 日本証券奨学財団
https://jssf.or.jp/scholarship.html
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