令和の子どもには「レジリエンス」が必要?! 宇宙飛行士の野口さんが搭乗機に名付けた「レジリエンス」とは

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東日本大震災を経験したのち、幼児教育業界で注目された“レジリエンス”という言葉をご存知でしょうか? それは未曾有の災害を経験した私たち大人と、そしてこれからの未来を生きていく子どもたちにとって「ますます必要とされる力」だといいます。
最近では日本人宇宙飛行士の野口聡一さんの搭乗機の名前としても、このワードが話題になっています。野口さんら4人の宇宙飛行士が着目したように、コロナ禍を乗り切る私たちに多くのヒントやアイディアを与えてくれる言葉ではないでしょうか。
今回はこのレジリエンスについて、幼児教育とデジタルメディアの関わりを長年研究されている愛知淑徳大学の佐藤朝美先生に詳しくお話を伺いました。

この記事のポイント

レジリエンスとは? これからの時代を生き抜くための力

レジリエンス(Resilience)とは、予期せず不可抗力なできごとに直面した際に、「うまく適応していく力」のことを言います。真っ向から立ち向かうのではなく、「しなやかにかわしていく」というイメージが近いそうです。
この力を身につけていれば、たとえ困難に直面しても容易には折れない心を持てると考えられています[1]

今まさに私たちがコロナ渦にあるように、これからを生きる子どもたちには、想像もできない未来が次々と待ち受けているかもしれません。その時に必要なのがこの“レジリエンス”。折れない心を持って、しなやかに適応し生き抜くことがますます求められているのです。
東日本大震災のような未曾有の危機を経験したのちに、レジリエンスという言葉が教育業界で注目されたのには、そういったわけがあるのです。

レジリエンスには先天性のものと、後天性のものがあると考えられています。生得的にもともと心の強さや適応力を生まれ持った人もいますが、適切なサポートがあれば誰でも獲得できると言われています。
では具体的にどのようなことを意識して育んであげればよいのでしょうか?

[1]平野 真理(2015)レジリエンスは身につけられるか:個人差に応じた心のサポートのために. 東京大学出版会

レジリエンスを高めるには?日々の関わり方を意識しよう

まず、幼児期に自己肯定感を強くもてるように育ててあげることが大切です。お子さんに対しては評価するような声かけではなく、常に共感するような声かけを意識し、日々の頑張りや良い行いをたくさん口に出して褒めてあげましょう。おうちのかたに認めてもらうことで、お子さんの自己肯定感はどんどん高まっていきます。

そして、特に大切だと考えられていることが、人と信頼関係を築くという体験です。つらいときにつらいと言える、助けてあげることもできるし助けられることもできる関係性、それをぜひお子さんと築いてください。

そういった親子の信頼関係をしっかり育むことが、レジリエンスを高めるのに非常に効果的です。

将来の“キャリアレジリエンス”にもつながる

幼児期にレジリエンスを意識して育むことで、お子さんが将来社会に働きに出た時にもその力がきっと役に立ちます。誰でもキャリアを築く過程ではさまざまな困難に直面するものですが、その時しなやかにかわしていける“キャリアレジリエンス”[2]に発展させることができるのです。キャリアレジリエンスが高い人は、就職時の理想と現実とのギャップや、異動や昇進・降格の際に失望することなく、前向きに仕事に取り組むことができると言われています。

このキャリアレジリエンスはいくつになってからでも育むことができますが、特に学生の場合は、さまざまなアルバイトを経験したり、サークル活動に専念したり、バックパックで世界を旅行したりする経験から育まれるのではないかと言われています。幼児のおうちのかたからすればまだまだ先の話になりますが、覚えておくとよいかもしれません。

[2]池田 めぐみ , 伏木田 稚子 , 山内 祐平(2018)大学生のクラブ・サークル活動への取り組みがキャリアレジリエンスに与える影響. 日本教育工学会論文誌 42(1), pp.1-14.

まとめ & 実践 TIPS

聞きなれない言葉“レジリエンス”ですが、子どもたちの未来を想像するととても大切な力だとわかりますね。レジリエンスを育むためには、お子さんの自己肯定感を高めてあげることと、親子の信頼関係をしっかり構築することを、今一度意識するとよいでしょう。
子どもたちの未来が常に明るいものであることが望ましいですが、いざという時のために今のうちから身につけておけるとよいですね。

出典
JAXA 野口宇宙飛行士の活動レポート
打上げ間近!コロナ禍での訓練を野口宇宙飛行士の言葉とともに振り返る
https://astro-mission.jaxa.jp/noguchi/report/201109-072042.html

プロフィール



愛知淑徳大学人間情報学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程、情報学環助教、東海学院大学子ども発達学科を経て現職。教育工学、幼児教育、家族内コミュニケーション、学習環境デザインに関わる研究に従事。日本子ども学会(理事)。オンラインコミュニティ「親子de物語」で第5回、「未来の君に贈るビデオレター作成ワークショップ」で第8回、「家族対話を促すファミリー・ポートフォリオ」で第11回キッズデザイン賞を受賞。

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