身近な人が新型コロナに感染したら。いじめや差別を防ぐ取り組み

新型コロナウイルスに感染してしまったお子さんがいるご家庭や、感染を心配している多くのご家庭では、コロナ禍による差別や偏見が、いじめにつながることを不安に思っているのではないでしょうか。近年、いじめの件数も増加していますから、新型コロナの影響が及ばないよう、特段の注意が必要です。文科省も、学校での取り組みを促す教材を公開しています。

この記事のポイント

差別や偏見をなくす動画を公開

文科省は、新型コロナの不安から陥りやすい差別や偏見を防ぐためのプロジェクトを発足させました。授業で使える動画を公開し、授業に活用できる教材や、保護者向けのお便りのセットを、学校の申し込みに応じて、配布する予定です。

動画は、すでにYouTube(ユーチューブ)で公開されています。感染した身近な人に対して「最悪だわぁ、アイツ、めっちゃ近所に住んでるんだけど……」「あの学校の近くに行っちゃダメよ」など、感染への不安から陥りやすい中傷の言葉は、自分たちも口にしてはいないか、SNSなどで発信していないか、ドキッとさせられます。

「病気」「不安」「差別」考えさせ

動画は、新型コロナを「病気」「不安」「差別」という三つの側面から捉え、その連鎖を断ち切る方法は何かを、子どもたちに考えさせる、という流れで作られています。視聴後、感染した人や、感染者と関わる人と、どのように接するべきかを、ワークシートなどを使って学びます。

もとになった「感染症の三つの側面」という考え方は、日本赤十字社が今年3月から発信してきた内容です。これに基づき、文科省も、休校中や学校再開後を通して通知を出してきました。しかし、現場は忙しく、なかなか教材化までは手が回りません。今回は、道徳やホームルームの時間に活用しやすい教材と、保護者便りやポスターもセットにして、学校全体で取り組めるようにしたのがポイントです。

思わず人を傷付けないよう

新型コロナに関連した、学校でのトラブルを防ぐ取り組みは、近年増加しているいじめの認知件数から見ても、重要なことです。

2019度の学校におけるいじめの認知件数は、61万2496件と、初めて60万件を超えました。特に小学校では48万4545件と、14年度の12万2734件と比較して、約4倍に増加しています。ただし、これには学校が積極的にいじめを認知しようと努力した結果が表れた、という側面があり、認知後の対応が重要になります。

どのようないじめが多いのかを見ると、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が小学校で61.0%、中学校で66.4%、「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩(たた)かれたり、蹴られたりする」が小学校で23.6%、中学校で13.7%、「仲間はずれ、集団による無視をされる」が小学校で13.9%、中学校で12.4%となっています。

まとめ & 実践 TIPS

新型コロナウイルスに感染しないよう、子どもたちに注意を促し、家族で防止策を取ることは大切です。しかし、不安が行き過ぎると、思わぬところで人を傷つけてしまうことにつながります。実際の疾病だけではない、感染症がもたらす影響を、一人ひとりが考えることが必要です。コロナが、いじめや不登校につながらないよう、学校だけでなく、家庭や社会全体で対応していく必要もあるでしょう。

(筆者:長尾康子)

出典
※文部科学省 新型コロナウイルス感染症に関する差別・偏見の防止に向けて
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00122.html

※文部科学省 令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00351.html

プロフィール

長尾康子

長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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