辛口評価のSSH、今後の課題は
- 教育動向
文部科学省が、2017年に指定したスーパーサイエンスハイスクール(SSH)について、3年目の中間評価を行いました。指定校77校のうち20校は、当初の狙いの達成が見込まれると評価。他方で、半数近くの学校に「改善や努力が必要」と、厳しい評価を付けました。何が課題となっているのでしょうか。
この記事のポイント
先進的な理数教育で217校指定
SSHは、科学技術系の人材を育成することを目的に、先進的な理数系教育を行う高校です。独自の教科や科目を置くことができ、大学や教育機関と連携した課題研究もできます。研究期間は5年間で、2020年度は計217校が指定を受けています。
半数に努力改善を求める
このうち、2017年度に新規指定を受けた77校について、外部の有識者が▽研究計画の進捗(しんちょく)▽理数系教育に重点を置いた教科や科目の編成になっているか▽課題研究や探究学習の取り組み▽指導体制▽外部との連携▽成果の発信……などを、5段階で評価しました。
それによると、「優れた取組状況」と評価された学校は、6校でした。研究開発の狙いの達成について「可能」と評価されたのは14校、「おおむね可能」が21校、「一層努力することが必要」が34校、「達成困難」が2校とされました。指定解除に相当する評価を受けた高校はありませんでしたが、指定期間の半ばで、半数に改善を求めた形です。
改革の先を行く取り組みを
評価が低かった指定校への指摘として、▽課題研究を深める授業や活動の時間が不足▽教材開発の成果や指導ノウハウの情報公開不足▽全校的な推進体制になっていない▽高大接続の改善に資する研究開発がされていない……などが挙がりました。
優れた取組状況と評価された高校の一つ、福井県立若狭高校は、地域資源に着目した「探究」型の独自科目を設定しています。環境分野の研究が盛んで、県内外や台湾、フィリピンの高校と「環境フォーラム」を開いています。多数の教員が関わっていることも高い評価を受けました。
兵庫県立加古川東高校の理数科は、1年次から「課題研究」のスキルを高める授業を取り入れています。「理数英語」「理数英語プレゼンテーション」など、将来の学会発表を想定した科目があるのが特色で、校外の発表件数が増加したことが評価されています。
まとめ & 実践 TIPS
SSH事業は、3年前に行われた行政改革推進会議のレビューで、目的と実態が合致しているのか、予算の妥当性はあるのか、と厳しい指摘を受けています。
一方、高校の新学習指導要領(2022年度入学生から全面実施)では、「理数探究基礎」「理数探究」などの新科目がスタートします。また、中央教育審議会では、各高校が社会的な役割や目指すべき学校像(スクール・ミッション)を明確にし、一貫した教育活動を行うよう求めることを検討しており、普通科に加えて「学際科学」の学科を新設する案も挙がっています。SSH事業は、それらの先駆けでもあります。
これからの高校の在り方を考える上でも、SSH指定校の奮起が期待されます。
(筆者:長尾康子)
※文部科学省 スーパーサイエンスハイスクール(2017年度指定)の中間評価について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/mext_00029.html
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