問題文から社会の見方が広がる!社会の入試問題

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社会の入試問題では時事や世相を扱った出題が数多くみられます。マンガやアニメなどが扱われて話題になることも多いのですが、実は問題文そのものにこそ、入試問題の奥深さを感じることができます。

この記事のポイント

時事や世相が問われる、社会の出題

書店の店頭では、7月末ごろから入試の過去問集が目立つようになってきました。小学校から高校までの教材の企画・編集に携わる立場としては、入試問題の分析は教科書の分析と同様に大きなウェートを占めています。
そして5教科の中でも、社会は「いま現在、世界・日本でおこっていること」についての出題が多いことから、「今年はどんな時事が扱われたか?」が分析観点の一つにあります。
たとえば今春の入試では以下のようなテーマ・話題での出題が目立ちました。

  • 2024年からの新紙幣に関する出題(明治大学附属明治中学校など)
  • オリンピックに関する出題(千葉県高校入試(前期)など)
  • SDGsに関する出題(東京学芸大学附属世田谷中学校など)

時事問題として取り上げられることの多い「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標。国連が定めた、2030年までに世界が達成すべき17の目標)」も、環境問題などにからめた出題が今年もみられました。
このようにその年々の入試で扱われたテーマ・話題を追っていくと、当時の社会・世相が浮かび上がってくるのも、社会の入試問題ならではの特徴です。

写真や図など多様な素材で問われる、社会の出題

教材を企画・編集する立場では、入試問題で「どのようなテーマ・話題が扱われたか?」だけではなく、「どのような素材で問われたか?」にも注目しています。
「こんな面白い資料、どこから見つけ出したの?」とか、「そういう切り口で扱ってくるか!」という出題側の工夫です。
社会の入試では、写真や図(風刺マンガやグラフなど)など、出題側が工夫を凝らしたさまざまな資料が扱われ、これまでにもSNSなどで話題になるものもありました。

  • アニメ「ニルスのふしぎな旅」「ムーミン」「小さなバイキングビッケ」のイラスト(2018年度センター試験 地理B)
  • 手塚治虫のマンガ(2014年度センター試験 日本史B)

そして地味ながら「おもしろい」素材というのが、文字が主体の【問題文】です。見た目でわかる写真や図と違い、じっくり読まない限りそのおもしろさに気づきづらいものですが、示唆に富むものが数多くみられます。

実はおもしろい!社会の問題文

社会の問題文は、教科書ではあまり扱われないテーマや切り口で書かれていることから、読むことで社会の見方・とらえ方が広がることも、楽しさの一つと考えています。歴史に興味がある方は、大学入試センター試験の日本史・世界史の次のような問題文をご覧になってみてはいかがでしょうか(センター試験の問題は大学入試センターのホームページで公開されています)。

  • 「近現代の風刺漫画」(大学入試センター試験 日本史B 2020年度第6問)など
  • 「世界史上の政治思想」(大学入学共通テスト試行調査 世界史B 2018年度第2問)など

ここであげた「近現代の風刺漫画」では、新聞などでみかける政治や社会を風刺する漫画が、戦前は戦争に肯定的な立場で描かれたことから、戦後、漫画家の戦争協力の責任が議論されたことが紹介されています。今も昔も影響力の強いマンガについて、メディアのあり方を問う問題文だと思います。
そして数ある社会の問題文のなかで、現時点での執筆者の一押しは次の問題文です。

  • 「感情のコントロール」(麻布中学校 社会 2018年度)

麻布中学校の問題文は、ネット炎上をテーマにしたもので、「見えない相手との関わりの中で/感情のゆくえ」という小見出しにあるように、「いま現在、世界・日本でおこっていること」への出題側の問題意識が垣間見える、示唆に富む問題文でした。

まとめ & 実践 TIPS

社会の入試問題は、時事や世相を反映した出題が多くみられ、特に問題文(リード文)からは、社会の見方・考え方を広めるきっかけにもなります。
入試テクニックに「問題文は下線部(傍線部)だけを読む」というのもありますが、たまには下線部にこだわらずに、お子さまとじっくり問題文を読んでみてはいかがでしょうか。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで,進研ゼミを中心に,小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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