コロナ禍を経験した家計とライフプランの再点検をしてみましょう

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が解除され、少しずつではあるものの、コロナ前の生活を取り戻しつつあります。「平常」に戻るまでには、まだまだ時間がかかるはずですが、学校再開のタイミングで、家計とライフプラン(生活設計)の点検をしてみることをおすすめします。

コロナ前とコロナ後の「貯蓄率の変化」をチェック!

家計と生活設計の点検と言っても、何から手を付けていいのか、悩むかたもいるでしょう。家計の点検として行いたいのは、家計簿を見て、コロナ前とコロナ後の支出内容をチェックすること。合わせて、「貯蓄率に変化が出ていないか」を確認することも重要です。
貯蓄率は、手取り月収に対して、貯蓄の割合は何パーセントになっているかを示す数値。コロナの影響を受けていない今年2月と、影響を大きく受けた4月や5月の「貯蓄率」を計算してみるのがよいでしょう。

計算式は次の通りです。

貯蓄額÷手取り月収×100=貯蓄率

手取り月収は、税金と社会保険料を差し引いた「可処分所得」のことになります。給与から住宅費や保険料、財形貯蓄などが引かれていれば、その分は加算して、手取り月収を出してください。たとえば、手取り月収は20万円だとしても、財形貯蓄が3万円、給与から引かれている保険料が2万円ある場合、手取り月収は25万円になります。

手取り月収に対する2月の貯蓄率は、仮に15%だったとしましょう。その貯蓄率を4月や5月も同じくらいキープしていれば、支出の中身に変動があっても、やりくりは今のままで大丈夫です。以前は15%程度の貯蓄ができていたのに、4月や5月は貯蓄率が10%を割り込んでいたとしたら、支出の中身の点検が必要です。お子さんが小学生までであれば、手取り月収の10%程度は貯蓄に回せるように家計支出を見直してみてください。共働き家計の場合は、お子さんが小学生まで貯蓄率を12~15%程度キープするのが理想です。10%~15%程度の貯蓄率をクリアできることが、正しいやりくりの目安と捉えてはいかがでしょうか。

一方、貯蓄率がかなりダウンしてしまい数%しか貯蓄ができていない、あるいは貯蓄がまったくできなくなったというご家庭では、支出内容の見直しが必要になります。支出内容の見直しを行う際は、家計バランス表を参考にしてみてください。家計バランス表に照らし合わせれば、どの費目の支出が多めなのかを確認できます。

ちなみに働き方に関わらず、おこづかいは夫婦2人分で手取り月収の10%としています。手取り月収が30万円であれば、夫婦2人分のおこづかいは3万円が適正額です。3万円をどのような配分で分けるかは、ご夫婦で話し合って決めればOKですが、10%のおこづかいには、昼食代や通勤のための交通費などは含みません。昼食代や交通費をお小遣いと一緒に渡す場合は、別途見積もって、上乗せするのが適切です。

貯蓄率をキープする意味は、教育資金や老後資金が不足しないため

お子さんが小学生くらいまで10%~15%の貯蓄率をキープすべき理由は、教育資金や老後資金が不足しないようにするためです。この数か月は、コロナの影響があるから家計費が変動していても仕方がないと、家計点検をしていないご家庭が多く見受けられますが、貯蓄力が逓減しているご家庭で、それはリスクにつながります。

貯蓄が増えなければ、お子さんが進学する際、奨学金などの借金に頼る機会が増える可能性も高くなるからです。既にコロナ以前から、定職に就けないなどを理由に奨学金の返済猶予を希望する人は増加しているのは、周知の事実。この先、貯蓄が思うようにできない状況が長引けば、奨学金に頼って大学進学をするご家庭も増えるでしょう。借金に頼らず、学業を終えさせてあげるのが理想ですので、なるべく早く、貯蓄ができる家計に立て直す努力が望まれます。

また、コロナの影響で失職してしまったかたは新しい職に就くまで生活設計が立てにくいと思いますが、それ以外のご家庭では、ライフプランの点検も行いましょう。ライフプランの点検には、家計簿に付いているライフプラン表を利用したり、HP上で無料のライフプラン表を見つけて、ダウンロードしたりするのがおすすめです。

ライフプラン表を準備したら、2020年、2021年、2022年……と「年」を書き入れるほか、家族全員の年齢やライフイベントなども記入しましょう。ライフプラン表を作成すると、西暦(令和)〇年にお子さんが高校や大学に入学するのかがわかりますし、兄弟姉妹がいらっしゃるご家庭では、「教育資金の重なり」も認識できます。大学に進学する時点で、どのくらいの教育資金がためられそうか、お子さんの教育費を使った後で、老後資金はどのくらい残りそうか……なども、ライフプラン表の中に予想額を書き込んでみてください。

元情報にアクセスする習慣を付けると正しい情報をゲットできる

ところで今年は、新型コロナウイルスの影響で、コロナ以外のニュースが取り上げられる機会が激減しています。そのような中で4月からは、高等学校などへの就学支援新制度がスタートしています。支援制度が新しくなったことで、収入の少ないご家庭に対する助成が拡充しているのです。

たとえば今年度から、年収約590万円未満(※)のご家庭は、私立高校の授業料が実質無償化されています。昨年までも、各都道府県において私立高校の助成制度は運営されていましたが、居住地によってその内容には格差がありました。具体的には、助成制度が充実している東京都と、他の道府県の間にはかなりの格差があったのです。(※)家族構成により、所得限度額は異なります。

今回の新制度においても、東京都は独自の基準(収入制限を緩和)で運営しているものの、他のすべての道府県において足並みが揃ったのは朗報といえるでしょう。授業料以外の施設費などは負担が続くとはいえ、公立高校と私立高校の費用負担の差が縮まったからです。学費に係る助成制度の内容を正確に理解しておけば、「うちは余裕がないから、公立高校を選んでね」などという、進路選択の幅を狭めるような言葉を、お子さんに投げかけなくてすみます。

新型コロナウイルス感染症の影響により、給付金や助成金をはじめ、今までになかった新しい制度ができて、自分にはどの制度が該当するのか、把握できずに悩まれたかたも多いように感じます。コロナの影響がいつまで続くかは誰にも予測できませんが、自分で申請しなければもらえない制度がたくさんあるのも事実。自分に該当する制度にもれなく申請するためには、情報弱者でいるのはリスクにつながります。

新しくできた制度の正しい情報を得るためには、文部科学省や総務省のような公的機関のHPをチェックする習慣をつけることもおすすめします。公的機関のHPには、広く知ってもらいたい情報は一般の人でも理解しやすいように、PDFファイルにまとめられて貼り付けられています。省庁が発信する元情報にアクセスする習慣を身に付ければ、ネット上にある真偽の怪しい情報にまどわされずに、正しい情報を手に入れられます。

皆さんのお子さんが高校や大学に進学するまでに何年もの時間が残されている場合、この先、さらに制度が改正される可能性があります。正しい情報を得る習慣を身に付け、お子さんの学年ごとに最新情報をきちんとキャッチしていくのが望ましいでしょう。

プロフィール


畠中雅子

大学時代よりフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て、1992年にファイナンシャルプランナーになる。新聞・雑誌などに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。著書は、「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿』」(ぱる出版)ほか、70冊を超える。

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