9月入学見送り? 「9月入学」が制度に与える影響 (3) 就職活動や奨学金の返済開始は?
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、入学時期、および新学期のスタートを「9月にしてはどうか」というテーマが議論されています。過去2回(1)(2)の記事に続いて、今回は就職活動への影響を考えます。
就活のスケジュール・企業の採用状況はどうなる?
9月入学・新学期に変わるのか、現行の3月卒業のままなのか。現在大学生をお持ちのご家庭では、不安に感じているはずです。特に大学4年生のお子さんは、新型コロナウイルス感染症の影響で、通常の年のように就職活動ができずに、困っていることでしょう。来年、就職活動を始める、現在大学3年生のお子さんにとっても、就職活動のスケジュールが大きく変わることへの不安は尽きないと思います。
就職活動が思うように進まないのに加えて、コロナ以前に比べて、企業側が採用人数を減らしてくる可能性も高いと思われます。もしかしたらこれからの数年は、近年まれにみる就職難の年になってしまうかもしれないのです。すでに就職活動を始めているお子さんは、「早く就職活動のスケジュールを確定してほしい」と願っているはずです。
ちなみに、我が家には子どもが3人いて、末っ子は現在、大学3年生です。私自身も大学生を持つ親として、9月入学・新学期へ変更されるのか、否かは他人事ではありません。就職活動のスタート時期については、過去に何度も変更されており、学生たちも困惑するケースが少なくないと、長女や長男の就職活動を見て感じてきました。長女や長男の就職活動のときよりも、不確定要素が増えていますので、子どもだけではなく、親も落ちつかない日々を過ごすことになりそうです。
もし卒業時期が夏になり、その結果、入社月が9月に変更されれば、学生でいる期間が半年延びることになります。「一日も早く働いて、家にお金を入れてほしい」と願う親からすれば、稼げるようになるまでの期間が延びてしまいます。
奨学金の返還開始が半年ずれる?
日本学生支援機構で貸与型の奨学金を借りている人は、卒業の半年後から返還がスタートします。現行制度では、卒業した年の10月から返還がスタートしています。もし9月入学・新学期に変更になった場合は、返還の開始月が半年ずれて、3月からになるのではないかと思われます。返還開始が先にずれるのは嬉しい話かもしれませんが、その分、返還の終了時期も半年遅くなります。喜んでばかりはいられないことを理解する必要があるでしょう。
返還された奨学金は、次に借りる学生の奨学金の原資ともなるお金ですが、新型コロナウイルスの影響で、安定した職に就けないお子さんが増えてしまう可能性もあります。安定した収入を得られないことが理由で、卒業して半年後からの返還が難しいとしても、滞納だけは避けて、返還の猶予制度を利用しましょう。
すぐには返還をするのが難しいと思っても相談をせず、口座から引き落としができない状態が発生すると、数回の滞納で保証人になっている親御さんのほうに請求がいきます(保証協会を使っていない場合)。兄弟や親戚などに連帯保証人を頼んでいる場合は、その方々にも迷惑をかけてしまうかもしれません。「払えないかもしれない」と思ったら、すぐに日本学生支援機構に相談することが大切です。
今回は3回にわたって、9月入学・新学期になった場合に関連する制度への影響を考えてきました。新型コロナウイルス感染症の影響は、企業側の採用人数を抑え、その結果、安定した職に就けないお子さんを増やし、奨学金の返還が困難になるといった「負の連鎖」を予測させてしまいます。
自分自身も大学生を持つ親として、決して他人事ではなく、議論の行方をハラハラしながら見守っている感じです。制度改正の行方については、議論の内容に関心を寄せていくほかありませんが、もし9月入学・新学期に制度が変わったとしたら、自分の子どもにはどのような影響が出るのか、皆さんのご家庭できちんと調べて欲しいと願っています。今回は主に大学生のお子さんがいるご家庭への影響を考えましたが、現在はまだ、幼稚園に通園されていたり、小学生だったりしても、必ず迎える「未来の変化」だと捉えて欲しいと思います。各家庭で変更による影響を理解して、教育資金の準備プランや奨学金の借り入れプランなどを早期に確認したり、見直したりすることが望まれるからです。
(筆者:畠中雅子)