教育資金の目標額設定は3段階で

子どもの教育費をできるだけ用意してやりたいという保護者は多いものです。一方、準備すべき金額と時期がよくわからないので、不安を抱くかたも多いのです。わからないまま目標設定の段階でつまずいて計画を立てないでいると、将来の教育資金不足につながってしまいます。理想の目標を立てつつ、より現実的な第2、第3の目標も用意して一つずつクリアしていくようにしましょう。

目標額は子どもの進路による差が大きい

「子どもの教育資金に関する調査2020(ソニー生命調べ)」によると、子どもの教育資金に不安を感じる理由として「教育資金がどのくらい必要となるかわからない」とした人が56.8%いました。

子どもの教育費は、1000万円とも2000万円とも言われます。いろいろな数字で表されるのは、子どもの進路によって金額が異なるのに加え、調査によって含まれる項目が違うなどが理由です。

次のグラフは、小学校から高校までは「子供の学習費調査H30年度(文部科学省)」、大学は「教育費負担の実態調査R1年度(日本政策金融公庫)」のデータを積み重ねたものです。公立と私立の組合せで教育費の合計額に違いがあることがわかります。

小学校から大学までオール公立(大学は国立)だと16年間の教育費は約1000万円、オール私立(大学は理系)だと約2500万円です。2.5倍もの開きがありますし、公私がまざると他の金額になりますから、目標金額の設定に迷うのは当然かもしれません。

ためるのは「大学・専門学校」のためのお金

小学校から高等教育の教育費のうち、高校までと高等教育の教育費では払い方が違います。高校までの教育費は、毎月の決まった収入から、その月の家計費の一部として払っていくのに対し、高等教育は1年間の学費を前払い(1回または2回払い)することがほとんどで、月謝制は原則としてありません。

高等教育は、年間の学費が高校までよりも高額です。1年間あたりの学費は私立小学校も高いのですが、私立小学校に通う児童の割合は約1.2%なので、多くの家庭にとって年間の教育費負担が最大になるのは高等教育の大学・専門学校時代ということになります。

大学や専門学校の費用は学校や分野によって差があります。子どもの進学先は「合格」して初めて決まるものですから、合格後でなければ本当の支出額はわかりません。

ただ、大学生の4割は私立文系ということはわかっています。子どもの進路を具体的に想定できない以上、まずは大学生の多くが通う私立大学の文系の費用を、教育資金の目標額に設定することが現実的でしょう。

第1目標額は500万円

「教育費負担の実態調査R1年度(日本政策金融公庫)」では、私立大文系の費用は717万円となっています。この金額には通学費や入学しなかった学校への納付金も含まれているため、4年間分の学校納付金よりは多めになっています。そのため、他の学費に関する調査等も考慮した500万円を私立大学文系の目標とします。生まれてすぐに貯蓄を開始すると、毎月の積立額は次のようになります。

500万円÷18年÷12か月≒2万3150円

大学入学前に500万円をためるのが難しいようであれば、300万円を次の目標にします。300万円は、私立大文系の2~3年分の学校納付金に相当します。不足分は子どもが大学入学後も貯めるようにします。生まれてすぐに貯蓄を開始すると、毎月の積立額は次のようになります。

300万円÷18年÷12か月≒1万3890円

300万円の目標クリアも難しければ、100万円が絶対に用意してやりたい目標額となります。100万円では入学金を含む1年目の学校納付金にも足りない可能性があります。ただ、子どもが奨学金を得るなどで自力でがんばる場合でも、奨学金を受け取る前に支払いが必要な受験料や入学手続きの費用は現金の用意が必要です。この金額を100万円と見積もり、生まれてすぐに貯蓄を開始すると、毎月の積立額は次のようになります。

100万円÷18年÷12か月≒4630円

すでに子どもが小学生や中学生だと、ためる期間は短くなります。期間が短くなると、毎月の積立額は多くなります。目標額とためられる期間を計算式にあてはめて、我が家の積立額を計算してみてください。その額を今月から積み立て始めれば、目標額を達成できます。

(筆者:菅原直子)

「子どもの教育資金に関する調査2020(ソニー生命調べ)」
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_200327.html

「子供の学習費調査H30年度(文部科学省)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400201&tstat=000001012023

「教育費負担の実態調査R1年度(日本政策金融公庫)」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf

「学校基本調査(文部科学省)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400001&tstat=000001011528

プロフィール



「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

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