高めよう通学路の安全性

休校期間が延長された地域もあり、不安な日々を送られているご家庭も多いと思います。
学校再開後、子どもたちが登下校で利用することになる学校までの道のりの安全は、大丈夫でしょうか。地域ぐるみの見守りだけでなく、スクール・ゾーンを増やすなど、ハード面での安全確保が課題です。

半数の小学校でスクール・ゾーンなし

近年、交通事故の発生件数や死傷者、負傷者・重傷者数は減少傾向にあります。しかし、集団登校の列や、信号待ちをしている親子や保育園児の列に車が突っ込むなど、子どもが犠牲となる痛ましい事故が相次いで発生しています。
政府は2019年6月に「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」を取りまとめ、未就学児を中心に、子どもが日常的に集団で移動する経路の安全確保を関係省庁に求めました。文部科学省は、都道府県教育委員会等に、学校を中心とした半径約500メートル程度の通学路で車両規制などを行う「スクール・ゾーン」の設定促進を要請しています。
こうした背景から、2018年度の幼稚園や小中学校の安全状況に関する文科省の全国調査では、通学路・通園路、スクール・ゾーンの有無やその安全対策について、初めて質問しました。
まず、通学路・通園路を設定している学校の割合は、幼稚園で28.3%、認定こども園で12.6%、小学校で98.1%、中学校で77.6%となりました。ほとんどの小学校で、通学路を設定していることになります。
しかし、スクール・ゾーンを設定している学校の割合を見ると、幼稚園で10.9%、認定こども園で6.1%、小学校で46.5%、中学校で20.9%という、低い結果が出ました。

安全確保に学校から働き掛けを

スクール・ゾーンを設定している小学校では、▽標識や路面標示を設置しスクール・ゾーンを明示化(88.8%)▽速度制限や車両侵入規制などで交通規制(63.7%)▽車の減速を促す道路の凸部(ハンプ)等による道路環境の物理的な改善(23.9%)……などが行われています。スクール・ゾーンを設定すれば実効性を伴う対策に踏み込めることから、通園路・通学路を指定するだけでなく、スクール・ゾーンそのものを増やすことが、登下校時の安全策につながります。
スクール・ゾーンは、自治体や市区町村が、学校や教育委員会、道路管理者や警察署と協議して設定します。厚生労働省は2019年11月、保育所周辺に、スクール・ゾーンに準じる「キッズ・ゾーン」の設定の推進を都道府県などに通知するなど、未就学児の安全を守る動きも同時進行しています。設置に向け、学校や教育委員会の一層の働き掛けが期待されます。
外出自粛の影響で交通量は少なくなったとはいえ、子どもたちは時差通学、大人は時差通勤で、朝晩の人や車両の流れは、いつもと違います。登下校時の地域の見守り活動も、従来通りとはいかない場面も出てくるでしょう。学校や地域が協力して、子どもの命を守る歩行者優先の意識向上と、ハード面の整備が急がれます。

(筆者:長尾康子)

※文科省 「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査(平成30年度実績)」の結果について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00180.html

※日本自動車連盟 (JAF) スクール・ゾーンとは?
http://qa.jaf.or.jp/drive/sign/05.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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