一斉休校はいつまで?今後の政府の対応や実施した背景、問題点についても解説
新型コロナウイルスの感染の拡大防止に向け、政府の要請により全国の小中高校、特別支援学校で、3月2日から順次、一斉休校が開始されました。自治体により開始日を遅らせる、休校はしないと判断するなど、対応は異なっています。
政府の一斉休校の要請については、「子どもを守ることにつながる」「感染拡大の防止につながる」など評価する意見がある一方で、「急な判断のため、学校現場や共働き家庭に混乱を招くことになる」「医療機関などで人手不足に陥る懸念がある」といった批判的な声もあがっています。
本記事では、全国の小中高校および特別支援学校での一斉休校の期間や背景、目的、問題点と、今後の政府の方針について解説をしていきます。
一斉休校は春休みが終わるまで
政府は、3月2日から一斉休校にするよう要請しています。新型コロナウイルスの対策としてはクラスター(集団)の発生を抑止することが重要とされています。クラスターのリスクの高い場所では一人の感染者が多くの感染者を生み出し、集団感染へとつながります。
政府は感染拡大を防止するために「ここ1、2週間が極めて重要な時期である」として一斉休校への理解を求め、要請しました。3月19日時点での日本では爆発的な感染拡大には進んでおらず、持ちこたえているのではないかと考えられています。
3月20日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部の終了後、小中高校の休校について萩生田光一文部科学相は「政府が要請した春休み前までの一斉休校は延長しないと確認した」と述べたことにより、一斉休校は新学期には引き継がれないことになりました。
また、萩生田相は「新学期の学校再開に向けた考え方と留意事項を取りまとめたガイドラインを来週の早い段階に公表したい」と語っており、学校再開の詳しい内容については3月23日週に発表されるようです。
今後の政府の対応について
また、安倍晋三首相が国民の生活と経済への影響を最小にするために立法措置を早急に進めるようにするよう指示したことを受け、新型インフルエンザ発生への対応方法について定めた特別措置法を新型コロナウイルスにも適用できるように法改正する検討を行い、3月13日に新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立し、翌14日から施行されました。そして23日、宣言に備えて海外の情報収集や都道府県との調整を担う、新型コロナウイルス感染症対策推進室を内閣官房設置しました。
これにより、首相は緊急事態宣言を発令することができます。緊急事態宣言は、個人や企業の権利を制限する「私権制限」が発生します。政府が国民、企業に対して外出自粛、学校の休校、イベント自粛などを要請できたり、さらに食料品・衣料品の売り渡し、運送業への物品輸送、医療目的での土地・施設利用を強制したりすることも可能です。
しかし、緊急事態宣言を発令するには、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある、全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある、の2要件を満たす必要があります。緊急事態宣言の発令するかどうかについては新型コロナウイルス感染症対策推進室の動きに注目です。
また、緊急事態宣言に注目が集まりがちですが、政府は、感染拡大防止策と医療提供体制の整備、事業活動の縮小や雇用への対応、学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応に向けて動いています。
一斉休校の背景
中国・湖北省の武漢を中心に感染者が増加した新型コロナウイルスによる肺炎ですが、日本国内でも感染が拡大してきました。感染拡大を受け、3月2日から全国の学校で一斉休校を行うように政府から要請が出されました。
2月27日に首相官邸で開かれた新型コロナウイルスの対策本部会合で、安倍首相は、感染拡大を防ぐため全国すべての小中高校や特別支援学校を3月2日から一斉休校にするよう要請しました。
ただし、要請に対する対応は各自治体によって異なっていました。東京都の都立高校をはじめ、名古屋市、福岡市、北九州市では要請通り3月2日から市立の小中高を休校とした。一方で、台東区、目黒区、武蔵野市、横浜市、静岡市、神戸市、那覇市などの自治体では、3月3日から休校を実施しています。また、栃木県、群馬県、兵庫県、島根県、岡山県、沖縄県などでは休校を行わないと判断した自治体もありました。
一斉休校の実施状況は、公立の学校で98.9%、国立の学校で100%、私立の学校で97.8%となっています。(2020年3月16日時点)
一斉休校の目的
感染拡大のリスクを最小限にとどめること、学校での集団感染を防ぐことが一斉休校の目的となっています。
安倍首相は2月27日の新型コロナウイルスの対策本部会合において、「ここ1~2週間が極めて重要な時期となる。政府としては何よりも子どもの健康安全を第一に考え、多くの子どもたちや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクに備えるために、今回の一斉休校の要請を行う」と説明をしています。
新型コロナウイルスの感染防止にはクラスター(集団)の発生を抑止することが重要とされています。学校では教室に30名ほどの子どもが集まるため、通常通り授業を実施すると感染が拡大すると考えられました。
一斉休校の問題点
一斉休校に伴い、子ども、子育て世帯、病院について大きな問題点があります。ここからはそれぞれの問題点について詳しく解説していきます。
子どもの問題点
一斉休校の問題点として、子どもの学習の遅れがあげられています。学校教育法施行規則などで年間に必要な授業時数が決められていますが、年度末のため春休み明けに授業時数を繰り越しできません。一斉休校を実施したため、多くの学校で必要な授業時数を下回ります。
この問題に対し、文部科学省は「一斉休校で、標準授業時数を下回った場合は、学校教育法施行規則に反するものとはされない。進級、進学等に不利益が生じないよう配慮する」としています。ただし、自宅での学習となると、学校で授業を行う場合と比べて、学習の遅れが生じてしまう懸念は依然として残されています。
学習遅れに対応するために、文科省は「子どもの学び応援サイト~臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト~
(https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index_00001.htm)」
を開設しています。自宅等で安心して活用できる教材や動画等を紹介しているので、お子さまの学習遅れに不安を感じているかたは参考にしてみてください。
またベネッセでも、一斉休校に対応して自宅学習教材やサービスの一部を無償提供しています。具体的には、小学1年生~高校2年生が3学期の学習の総まとめができるオリジナル教材「春の総復習ドリル」や学年別に漢字・計算練習ができる「ワクワク漢字・計算 WEB」、教科書・副教材を登録すると自宅で学校の授業の復習ができる高校生向けアプリ「予習復習効率UPアプリ」を無償提供しています。一斉休校中、どのようにお子さまの学習をサポートしたらよいか分からない、というかたはぜひ活用してください。
保護者のかたは一斉休校中のお子様の学習には不安が多いと思いますが、保護者の協力や通信教育の利用をすることで、家でもできることは多くあります。新学期に備えてお子さまの学習を手伝ってあげましょう。
子育て世帯の問題点
子育て世帯には一斉休校の期間中、「誰が子どもの面倒を見るのか」「子どもの受け入れ先をどうするのか」という問題があります。学童が児童の受け入れを行ったり、休校中もやむを得ない場合は学校で受け入れたりと、各地で対応が異なっています。
受け入れ先がない場合は仕事を休まざるをえなくなるため、収入減・支出増につながり、家計が苦しく生活が困難になっているかたもいるでしょう。突然の一斉休校や、感染症の拡大で不安が募る中で、家計にもダメージがあるのは大変な苦労となります。
政府はそのような状況に対応するべく、「経済の面においては、雇用の維持と事業の継続を、当面最優先に全力を挙げて取り組む」と発表しており、全額国費の助成金により、正規・非正規を問わず、休職中の給与の手当や、放課後児童クラブや学校教室の活用など、地域の実情に応じて、実施している取り組みについて支援します。
また、休校中の給食費を保護者に返還するように、文部科学省は3月10日に全国の教育委員会等に要請しました。「学校臨時休業対策費補助金」から返還金の一部を国が補助することを発表しています。
病院の問題点
さらに、医療機関でも一斉休校に伴って人手不足の問題があります。
厚生労働省は、一斉休校を実施することで、子どもを持つ医師、薬剤師、看護師、リハビリ専門職等の医療介護福祉分野の専門性を有する仕事をする保護者が子育て等を理由に休暇の取得等を行うことを想定していました。
しかし、病院は利用者の方々やその家族の生活を継続するうえで欠かせないものであり、利用者に対して必要な各種サービスが継続的に提供されることが重要です。
そこで同省は各自治体に対して、人員不足状況や診療の継続の可否の影響について、各医療機関等の承諾を得たうえで、特に救急医療、透析医療、新型コロナウイルス感染症対策などの地域医療に対して影響が大きい医療を優先して把握するとともに、近隣医療機関間の職員融通や輪番制などの体制整備など、地域の実情に応じて必要な医療提供体制を構築するよう要請しています。
そのため、通常通り診療している病院もあれば、地域医療に対して影響が大きい医療を優先しての対応をしている病院もあります。近くの病院が通常通り診療しているかは、病院を訪れる前に事前にどのような対応をとっているかを確認するとよいでしょう。
今後とるべき対応
一斉休校の期間や背景、目的、問題点と、今後の政府の方針について解説をしていきました。
一斉休校の問題点のなかでも説明しましたが、一斉休校に伴い、お子さまの学習に悩んでいる保護者のかたは多いと思います。するべきこととしては、「一斉休校の期間をどう過ごすか」をお子さまと一緒に考え、決めることです。勉強することやゲームをしないことを保護者から一方的に押し付けても、子どもは反発してしまいます。「一斉休校の期間をどう過ごすか」を一緒に考え、最終的な判断を子どもにしてもらいましょう。
そして、どう過ごすかが決まったら、勉強の時間やゲームの時間を決めるなどルールを一緒に作っていきます。一緒に作る、最終判断をお子さま自身がするという「自分で決めた」行為が、お子さまの自主的な勉強だけでなく、成長につながるのです。
突然の一斉休校で焦るかたも多いと思いますが、この期間をうまく利用し、お子さまの成長の機会とするのもよいのではないでしょうか。
また、連日、新型コロナウイルスに関する報道が続いていますが、正しい情報を伝えているメディアだけでなく、不安を過剰にあおる情報や間違った情報を伝えているメディアも少なからず存在しています。すべての情報を鵜呑みにするのではなく、ご自身で正しい情報を得ること・正しい情報を見極めることが重要です。国や各自治体の公式サイトには、自治体ごとの対応方針や、感染症予防のための対策方法などが載っているので、参考にしてみてください。
下記は、新型コロナウイルスについて正しい情報を得るために有用なWebサイトです。
日本感染症学会 新型コロナウイルス
http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31
首相官邸 新型コロナウイルスお役立ち情報
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_info.html
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#kokunaihassei
文部科学省 新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index.html
東京都 新型コロナウイルス感染症 対策サイト
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/