誰にも優しい「バリアフリー」の学校を作るために

東京五輪・パラリンピックの開催を機に目指したい社会の在り方として、障害者や高齢者などさまざまな人が活動しやすくする「バリアフリー社会の実現」があります。バリアには物理的なものだけでなく、制度や意識など目に見えにくいものもあります。さまざまな子どもが学び、地域の人も集う学校においてもバリアフリーを積極的に進めていく必要があります。

制度や意識もバリアに

近年、駅や公共施設などで、車いすやベビーカーを使う人が使いやすいスロープや、多目的トイレなどの設置が進んできました。2006年に施行された「バリアフリー新法」という法律に基づくものです。バリアフリーのバリアとは、日本語では「障壁」と訳されます。生活の中でいろいろな活動をしようとするときに、それを阻む「かべ」を指しています。

たとえばエレベーターのない建物では、そのことがバリアとなって、車いすの人の移動を阻んでしまいます。エレベーターを作ればバリアを取り除くことができ、車いすの人も利用することができます。こうしてバリアを解消していくことを、バリアフリーといいます。

「物理的なバリア」のほかにも、「制度的なバリア」や「文化・情報面でのバリア」、「意識上のバリア」と、さまざまな「バリア」によって、さまざまな人が社会で活動することが困難になっている場合があります。これら四つのバリアへの理解を深め、バリアフリーに向けた実践的な行動に移せるよう、文部科学省は、教材「心のバリアフリーノート」を作成・公表しました。基本的な理解をする(知識・技能)」▽バリアフリーについて考える(思考力・判断力・表現力)▽バリアフリーについて行動する(学びに向かう力・人間性等)……と、新学習指導要領が育成を目指す資質・能力の3本柱に沿って学べるよう構成されています。

学校施設の整備で意識向上へ

この教材のポイントは、障害が個人の中にあるのではなく、社会の中にある、という考え方に基づいて作られたことです。これは、障害の「社会モデル」と言われます。階段しかない建物の中で車いすの人が2階に上がれないのは、体の機能の障害が原因だと考えられがちです。そうではなく、「エレベーターがない」というバリアが原因だとして、社会の側が変わることを促すもので、国際的にもこの考えが広まってきています。

しかし、特別支援学校を除き、学校は、意外にもバリアフリー化が遅れているところです。校舎のスロープ設置率は小中学校で65.9%、高校で73.5%、多目的トイレの設置率は小中学校で63.8%、高校で82.8%となっています。この数字は、高齢者や乳幼児、病気の人などが避難所として学校を利用する場合を想定してのことですから、障害のある子ども達が学校内で他の子ども達と同じように授業に参加し、活動するためには、さらなるバリアフリー化が求められます。

政府は今後、法律の改正をしてバリアフリーを進めていくとしています。学校施設の改修が進み、さまざまな人が利用しやすくなる「優しい」環境を子ども達が目の前で見ることが、バリア解消に向けた行動力を育むきっかけになるはずです。

(筆者:長尾康子)

※文科省 心のバリアフリーノート
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1394142.htm

※文科省 避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果について(2019年4月1日時点)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/bousai/1420466.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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