すべての子どもが「置き去りにされない」社会を

政府はこのほど、子どもの貧困問題を解決するための政策方向性をまとめた「大綱」を閣議決定しました。達成すべき指標数を増やし、支援策の方向性を示しています。国際的にも貧困による学力格差とその連鎖が課題となっていることから、日本でも子どもを第一に考えた教育支援の充実が求められています。

貧困の連鎖を断ち切るために

国民生活基礎調査に基づく子どもの貧困率は、2015年で13.9%。7人に1人が、国民の生活水準や文化水準を下回る「相対的貧困」の状態にあります。特に「ひとり親家庭」の貧困率は50.8%と深刻です。保護者が経済的に困難な状況にあると、子どもにさまざまな影響が及びます。いわゆる「貧困の連鎖」です。生活保護世帯の子どもの高校中退率は、全世帯の割合(1.4%)に比べて約3倍の4.1%。大学や専門学校への進学率は、全世帯の割合72.9%に対して、2分の1の36.0%にとどまっています。

学習の機会を失うことは、学力の低下を招くだけでなく、不安定な就業により、次の世代への貧困につながる可能性があるのです。

こうした状況を改善するため、2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が制定され、国の施策の方向性を定めた「大綱」が設けられました。19年6月に同法が改正され、子どもの将来だけでなく、「現在」も育った環境で左右されることのないよう、すべての子どもの教育の機会均等を守ることが盛り込まれました。

今回の改正も踏まえて、先頃、今後5年間の施策の方針をまとめた「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定されました。

大綱は、子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、子どもを第一に考えた支援を包括的・早期に実施するとして、実態把握のための指標数を25項目から39項目に増やしました。支援策の中でも、最初に取り上げられているのが「教育」に関する内容です。教育費負担の軽減や、さまざまな教育支援策が列挙されています。

学力格差解消が対策のカギ

先頃発表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)の2018年調査結果では、家庭の背景や経済状況、文化的状況をまとめた指標である「社会経済文化的背景(ESCS)」と、平均得点との関連が明らかになりました。日本でもESCSの下位25%の層では、4人に1人以上が「読解力レベル1以下」で、しかも前回調査より増加しており、放置せず対策が必要だと有識者は述べています。

改正推進法では、市区町村が子どもの貧困対策計画を策定することが努力義務とされたことから、子どもの貧困対策の基盤として、学校の指導や運営体制の構築には大きな期待が掛かります。

大綱がうたうスクールソーシャルワーカー(SSW)やスクールカウンセラー(SC)が機能する体制づくり、少人数指導や補習などの指導体制の充実は、これまでも教育施策として推進されてきたことです。今後、子どもの貧困対策としても、一層の進展が望まれます。

(筆者:長尾康子)

※ 内閣府 子供の貧困対策
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/index.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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