子育て費用や教育費はどれくらいかかるの?準備はどうしたらいい?
子どもを育てるために、いったいいくらお金を準備したらよいのでしょうか。とりわけ教育費は「聖域」とよばれているように、かけようと思えば青天井でかけることができる費用だと言われています。だからこそ早くからある程度の金額を把握しておいて、いざという時に困らないよう準備をしておくことはとても大切なことなのです。そんな皆さんのために、子育ての費用のほか、教育費の最新事情や今どきの教育費の貯め方について解説したいと思います。
【年齢別】未就園児から中学生までの子育て費用
少し前の調査とはなりますが、内閣府「2009年度インターネットによる子育て費用に関する調査」より、未就園児、保育所・幼稚園児、小学生、中学生それぞれの年間でかかる子育て費用の総額をご紹介します。
ご覧の通り、子育て費用は年齢が上がるごとに高くなっていきます。主な要因は、食費や医療費、教育費の増加です。就学区分ごとの特徴を見ると、幼稚園や保育所に通うご家庭では「保育費」の負担が大きくのしかかっているようですが、小学生以上になると、「学校教育費」のほかに、「学校外教育費」の負担が上がっているのがわかります。ちなみに「学校外教育費」とは、学習塾や家庭教師などの費用。選ぶ学習塾によっては、調査結果に出ている以上のお金がかかることもあるでしょう。
反対に、子どもが大きくなるにつれて減っている項目があります。それが「子どものための預貯金・保険」にかけている費用。子どもが大きくなると、生活費や教育費の負担が増えますが、その分、貯金できるお金が減る傾向にあるようです。このことから教育資金を貯めるには、「子どもが小さいうちにできるだけ増やすことが得策」だということがわかります。
「子どもが希望する学校に行かせてあげたい」そう思うのが親心。しかしその前に、希望する学校に通わせてあげられるだけの費用を準備する必要があります。そこで教育費の総額で確認してみたいと思います。
幼稚園から高校3年生までの学習費の総額は?
文部科学省が公表している「2016年度子供の学習費調査の結果」を見ると、教育費は、公立を選ぶか、あるいは私立を選ぶかで大きく金額が異なっていることがわかります。たとえば、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合の学習費総額は540万円です。幼稚園と高校のみ私立に通い、ほかは公立だった場合の総額は792.2万円。すべて私立に通った場合はなんと1,769.9万円もかかっているという結果が出ています。
大学や専門学校へ行くといくらかかる?
一般的には子どもが大学などに通う年代が、教育費のピークだと言われています。いったいいくらかかるのでしょうか。
日本政策金融公庫が公表している「教育費負担の実態調査結果(2019年公表)」によると、国公立の大学に通った場合の4年間の入学費用も含めた在学費用は、約539.3万円。私立大学に通った場合は文系か理系かによって異なっており、文系の場合は730.8万円、理系の場合は826.7万円が平均額となっています。専門学校や短大などに通った場合でも、2年間で300万円以上かかっているのが実態です。当然ですが、子どもが2人、3人いるとすれば、これらの金額の2倍、3倍と必要になってくるということなので、やはり多くの資金を準備しておく必要があります。
進路別の教育費の総額はいくら?
さてここからは、幼稚園から大学までの進路別の教育費総額を確認してみたいと思います。下表を確認する限り、私立を選ぶか、公立を選ぶかで費用に差が生じてくるようです。だからと言って、幼稚園から大学まですべて国公立に通えば安く済むかというと、案外そうでもなく、少なくても1,000万円以上はかかるということがおわかりになるでしょう。
子どもの進学先を私立にするか公立にするかで迷う人も多いと思います。私立の魅力は、その学校ならではの教育が受けられることや、施設面が充実していることなどです。一方、最近は公立学校でも、学校ならではの特色を打ち出しているところが増えている印象です。それこそ子どもに合った公立の学校に進学できれば、費用が安く済むうえに、充実した教育を受けられるということもあり、これ以上理想的なことはありません。とはいえ、学校選びは、実際に足を運んで見てみないとわからない部分もあります。そう考えると、私立と公立でどちらが良いのかは一概に言い切れませんが、親としては、どちらを選んでもよいように資金の準備をしておくことが理想です。子どもに合った学校を子どもと一緒に探してあげて、親子で納得した学校に進学させてあげることがよいのではないでしょうか。
高等学校等就学支援金で高校の授業料は実質無料
高等学校等就学支援金制度とは、高校に通う子どものいる世帯に対して、授業料に充てるための支援金を給付する制度です。年収約910万円未満の世帯に対して、公立高校の授業料相当額(年間11万8,800円)が支給さるため、該当する世帯では高校の授業料が実質無料となります。もちろん私立高校に通っている場合でも、要件を満たしていれば同じ金額が支給されるうえに、私立学校の学費支援制度を設けている自治体に住んでいる場合であれば、その支援もダブルで受けることが可能です。
また、2020年4月からは新たに、私立学校等に通う生徒に対して就学支援金の上限額を引き上げる制度の改正が行われ、年収約590万円未満の世帯では、私立学校の授業料が実質無償になります。このように高校の授業料が無料になる高等学校等就学支援金は、家計にとってとてもありがたい制度です。しかし、子どもが高校生の間は、大学進学に向けてお金を貯めていく時期とも言えるため、学費が無料だからと安心せず、その分の額を貯金するくらいの気持ちでいたほうがよいでしょう。
教育資金はどうやってためたらよい?
教育資金は、将来確実に必要となる資金であるという特性からすると、安全性の高さを最優先にしたため方を選ぶことが重要です。そこで考えられるのが、財形貯蓄制度といった給与天引きできる制度の活用や、定期預金などの利用です。そのほか、学資保険や低解約返戻金型終身保険といった、保険商品を利用するのもよいでしょう。
ただし、長引く低金利状態を勘案すると、これらの商品は「増やす」という目的からは程遠いと言わざるを得ません。そこで、ためるお金の一部を投資信託などの運用商品で回すのも一案です。たとえば、つみたてNISAを利用して、投資信託で教育資金を作るのはどうでしょうか。つみたてNISAを利用すれば、運用益に対して税金がかからず、しかも選べる商品が金融庁のフィルターがかかった比較的安全性の高いと言われている投資信託に限られています。
もちろん教育資金は一つの方法だけではなく、複数の方法を組み合わせてためていくのでもよいのです。そこで財形貯蓄と投資信託で資産形成したケースをシミュレーションしてみたいと思います。
仮に財形貯蓄を利用して毎月2万円を貯めていくとします。すると元本だけでも18年後には432万円は貯めることができます。一方、投資信託を毎月1万5,000円ずつ、つみたてNISAを利用して積み立てます。18年後の元本は324万円になり、仮に3%の運用が実現できたとしたら、利息を含めた総額は429万円(+105万円)になります。合計で861万円の教育資金が準備できることになるのです。
ただし、金融商品にはそれぞれメリットとデメリットがあります。それらを把握して、自分に合った商品を選びましょう。
支給されるお金はためておこう
子ども向けの手当金や助成金は、すぐに使うのではなく、ためるとそれなりの大きな金額になります。たとえば児童手当をすべてためることができれば、子どもが中学校を卒業するまでに200万円にもなります。また、お住まいの自治体に子育て費用をサポートする助成などがある場合もあります。もらい忘れのないようにするのはもちろん、受け取ったお金が生活費に紛れることのないよう、専用の口座を作るなどしてしっかり管理しましょう。
お金のためやすい時期を逃さない
子どもが大きくなると、生活費や教育費が増えてきて、計画通り貯蓄を増やせない時期があるかもしれません。反対に、お金がためやすい時期というのもあります。お金のためやすい時期は、子どもが生まれてから小学生の間(中学受験をするご家庭は小学3年生までの間)までです。ため時を逃すと、当分ためられる時期は訪れません。その間にできるだけ貯金を増やすことを意識しましょう。
祖父母などからの贈与は非課税となる
祖父母から教育資金の贈与を一括で受ける場合には、条件を満たすことで1,500万円まで税金がかからなくなっています。この非課税措置が受けられるのは2021年3月までです。非課税の特典を受けるためには、金融機関で専用の口座を開設し、教育資金として資金を払い出した場合には、領収書などを金融機関へ提出する必要があります。適用となる教育資金は、入学金や授業料など学校に直接支払うもののほか、塾代や習い事の費用なども含まれます。ただし利用するには、贈与を受ける人の合計所得金額が1,000万円以下であることなどの条件があります。制度の理解や手間はかかるかもしれませんが、高額な贈与税を払わなくてよいお得な制度なので、祖父母からの贈与が受けられるなら検討すべき制度です。
教育費が足りない時はどうする?
教育資金をどんなに周到に準備をしてきたとしても、教育費を自己資金で賄えないことは起こり得ること。そんな時まず奨学金を検討し、次に教育ローンの利用を考えてみましょう。なお、奨学金は子どもが借りて子どもが返済するものであり、教育ローンは親が借りて親が返済するという違いがあることは覚えておいてください。
奨学金で代表的なのは、日本学生支援機構の奨学金制度です。日本学生支援機構の奨学金には、給付型と貸与型があります。このうち、お金を返さなくてよいのが給付型。誰もが利用できるわけではなく、「住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生」であることのほか、学生本人の「学業などに関する要件」を満たしている必要もあります。なお給付型は2020年4月より制度が拡充され、奨学金の支援額が増えることとともに、入学金や授業料の減額や免除も受けられるようになります。もう一つの貸与型には、無利子の第一種奨学金と、利息がつく第二種奨学金があり、これらとあわせて、入学時の一時金として借りられる入学時特別増額貸与奨学金(利息付)も用意されています。奨学金はこのほかにも、大学独自の奨学金、民間団体や企業の奨学金などもあるため、いろいろ調べてみるとよいでしょう。
一方、親が子どもの教育資金を借りる場合には、日本政策金融公庫の教育ローンの利用を検討しましょう。最高350万円(海外留学は450万円)まで借りることができ、奨学金との併用も可能です。
さいごに
当記事でご紹介したように、大学まで卒業させると、教育費は少なくても1,000万円以上かかることになります。確かに資金が不足しても、奨学金や教育ローンの利用で補うことは可能です。しかしお金を借りたあとには必ず返す必要もあり、その返済が将来子どもの負担になることや、親自身の老後を脅かすこともあるのです。そうならないために、教育資金はできるだけ早くからためて、少しでも多くの資金を準備することが大切です。
また、ためるにあたっては、生活費の見直しをして支出を減らすことや、共働きなどをして収入を増やすことにも目を向けてみてください。長いスパンで貯蓄計画を立てることが、資金面での安心につながることになります。
<参照資料>
●内閣府「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版(PDF)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/cyousa21/net_hiyo/mokuji_pdf.html
●文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1399308.htm
●日本政策金融公庫 「教育費負担の実態調査結果-2019年-」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_h30.pdf
●高等学校等就学支援金(制度の改正も含めて)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm
●教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm
●日本学生支援機構の奨学金
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/index.html
●日本政策金融公庫の教育ローン
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html