子どもへの金銭教育は早め早めをすすめるワケ

子どもがいるご家庭では、年々、教育費の負担をひしひしと感じていらっしゃることでしょう。文部科学省の方針によって、小学校から英語やプログラミングが必修になる予定ですから、家庭では対応できず、習い事が増えていることも一因かもしれません。いくら3歳から5歳までの幼児教育が無償になったとしても、今後も教育費の負担が家庭にのしかかってくる現状は変わらないことが予想されます。今後、教育費を準備するには、単に節約だけでは太刀打ちできません。ここはぜひ将来を見据えて、教育費という費用に対する意識を子どもに持たせるために、少しでも早く子どもへの金銭教育を考えてみませんか。

今の子どもにごまかしはきかない

ある子ども雑誌の付録が売れているそうです。コンビニのATMや回転ずし屋など、単に作ることを楽しむだけではなく、モーターなどによって実際に動くという本格的な工作となっています。この工作のATMで驚くのは、おもちゃのお札を入れられるだけでなく、実際のお金も出し入れできることです。銀行やコンビニのATMの前でお金に触ろうとして、お母さんに怒られているお子さまを見かけることがあります。子どもにとっては、見慣れているものの触らせてもらえない憧れの機械に触れられるという、感動ものの体験となっていることが人気の理由でしょう。

小さいうちから、スマホやタブレットなどに触れられる環境の子どもたちには、「これは触ってはダメ」「これは大きくなったらね」などの一時的なごまかしがききにくくなっています。おもちゃのお金でごまかされてくれる時期はとても短いのです。ダメなら「なぜか」を話し、できるだけ本物を「早めに触らせて失敗させる」実体験が必要になってくるのです。

お金の概念を持たせることが大事

お金の専門家であるFPとしては、できるだけ早い時期に、子どもにお金の概念を持たせることがとても大事なことだと思っているのですが、子どもに小さい頃からお金を使わせているというご家庭にお会いすることは多くありません。ただ、子どもがお金だと意識せず、何気なく使っていることはよくあるでしょう。交通系のICカードを改札で使わせていたり、同様に、交通系ICカードを使ってコンビニでお菓子を買ったりするのはよく見かける光景です。「ピッ」と接触させる行為は、今の子どもにとって、「物を買う」のに必要な自然な行為です。ただ、子どもにとって、お金を払っているという感覚に結びついていないことが問題なのだと言えます。

以前、笑い話として聞いたことがあるかもしれませんが、家でお金がないと言ったお母さんに、「駅に行けばお金がATMから出てくるよ」と教えてくれた幼児の話があります。これは今や笑い話ではありません。どこのご家庭でも起こり得る会話であることが怖いのです。切符を見たことがない子どももいます。ピッと接触させるだけの行いは、お金は機械から出てくるもので、親が働いた対価であるという一番大事な点が感じられません。なくなればいくらでも湧いて出てくるわけではありません。こういうお金の概念がわからなければ、親への感謝も素直に湧きませんし、働いて初めてお金を受け取れるという実感がないことから、「お金は大事なもの」「大事に工夫して使おう」という意識は育ちにくくなります。

子どもが小さいうちの金銭教育は小さなことから始めよう

幼児教育の無償化は親子でお金について考えるよい機会です。無償化により浮いたお金を習い事に使うこともあるでしょうが、娯楽に使うというケースもあるでしょう。たとえばゲームセンターや駄菓子屋さんも、未就学児と一緒にお金のことを学ぶにはよい練習場です。その際には、ぜひ使ってよい上限の金額を親子で設定してみましょう。駄菓子屋さんであれば1,000円でもかなりのお菓子が購入できますし、ゲームではちょっと物足りないぐらいの金額でしょうか。この金額しか使わないということを決めれば、買うお菓子の組み合わせを考えたり、お金を使う前に結構楽しめるはずです。

なぜ、小さいうちの金銭教育が効果的なのでしょうか。それは、子どもにスマホを持たせる年齢になってしまうと、実際にお金のやり取りがなくても、スマホやICカードにチャージされたお金を使うことが増えるからです。「大事に使う」という概念が不足すると、気が付けばお菓子を多めに買ってしまったり、不要なものまで買ってしまったりすることが多くなります。子どもが成長するにつれて、親がずっと監視するわけにはいきませんから、だんだん金銭感覚が狂ってしまうこともあるでしょう。就学前の時期だからこそ、失敗したときも、素直に親の言うことが聞けるという意味では、一番金銭教育がしやすい時期と言えるかもしれません。ささいなことからでよいのです。日常生活に子どもにお金を使わせることを取り入れてみましょう。

今、奨学金を受給している学生は2人に1人です。奨学金を借りるという行為は、「借金」にもかかわらず、「借金である」という罪悪感が少ないと言われています。ただ、名称が何であろうが、借金であることに変わりはありません。子どもの教育費は、「減らす」ことは困難ですが、子どもと一緒に費用を意識することで節約することが可能となるかもしれません。できるだけ「借りない」ために、小さいうちから、費用についての金銭感覚を育てることはとても大事なことだと言えるでしょう。

プロフィール


當舎 緑

社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー。資格取得をはじめ、教育・育児、マネーなど一般消費者向けのセミナー、執筆活動を行う。子どもにかけるお金を考える会(http://childmoney.grupo.jp/)のメンバー、一般社団法人かながわFP生活相談センター(https://kanagawafpsoudan.jimdo.com/)の理事でもある。金融機関での年金相談はじめ、区役所、県民相談の窓口での行政相談、病院でのがん患者就労支援相談の窓口で一般向けの相談にも応じている。家庭では3児の母でもある。

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