教育の情報化、「手引」で追いつけ

コンピューターやインターネットを抜きにした仕事や生活が考えられない時代にあって、学校も一層のICT(情報通信技術)活用が望まれています。文部科学省は、新学習指導要領に対応した手引を作成して、子どもの情報活用能力育成やICT環境整備の進め方を示そうとしています。

ICT活用の現場向けバイブル

前身である「情報教育に関する手引」は、1990年を出発点に、学習指導要領の改訂に合わせて作成されてきました。今回作成された「教育の情報化に関する手引」は、2017年から順次公示された小・中学校と高校の新しい学習指導要領に対応すべく、有識者による検討会で約7カ月の議論を経て、まとめたものです。

前回の作成は、10年前です。その間、社会のICT環境は大きく様変わりしました。あらゆる産業分野でビッグデータや人工知能(AI)技術の活用が進み、次世代の高速通信規格「5G」もサービス開始が迫っています。

ICTを創造的に活用できる人材が望まれていることから、指導要領のみならず、学校や教育のICT化に関する提言や計画も、数々策定されています。手引はそうした背景に基づき、学校や自治体がどのようにICT化を進めていけばよいのかを具体的に示したマニュアルといえます。

授業での活用、踏み込んで例示

新指導要領は情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」だと明確に位置付けています。手引は全体で8章から成りますが、第4章の「教科等指導におけるICTの活用」では、ICTを効果的に活用した授業例を示しました。

まず、学習場面に応じたICT活用にはどのようなものがあるかを分類。「一斉学習(A1)」「個に応じた学習(B1)」「調査活動(B2)」「思考を深める学習(B3)」「表現・制作(B4)」「家庭学習(B5)」「発表や話合い(C1)」「協働での意見整理(C2)」「協働制作(C3)」「学校の壁を越えた学習(C4)」の10例を挙げました。

その後、小学校理科なら▽5年生の「動物の誕生」でメダカの産卵直後の卵と、数日後の様子を比較して提示する(A1)▽6年生の「土地のつくりと変化」では、火山の噴火の様子などをネットで調べる(B2)……など、小中高の各教科でのICT活用術を例示しました。ホームルームや生徒会活動などの「特別活動」や、特別支援教育における活用例も挙げています。

一方、第6章の「校務の情報化の推進」では、少ないページ数ながら、学校の働き方改革を踏まえて、独立した章立てとしました。第7章「学校におけるICT環境整備」では、今年6月に施行された「学校教育の情報化の推進に関する法律」などの法的根拠を示した上で、地方公共団体がICT環境整備を推進する際のポイントをまとめました。

今回の手引は、現時点で学校に導入可能なICT活用法をスピーディーに反映させましたが、検討会では、ネットワーク設計の重要性や、子どもや先生がコンピューターにログインする際のアカウント管理に関して記述が薄い、との指摘もありました。文科省では今後、追補版の作成を検討するとしています。こうした課題を取りこぼさず、学校現場に役立つバイブルとしてアップデートされることが求められています。

(筆者:長尾康子)

※文部科学省 「教育の情報化に関する手引」作成検討会(2018年度)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056_01/index.htm

プロフィール

長尾康子

長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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