活用力を伸ばす授業の在り方は?

文部科学省の研究機関である国立教育政策研究所は、学校の授業を改善するための『授業アイディア例』を公表しました。今回は中学校の英語が初めて登場。教師がモデルになる言語活動を通して力を伸ばす授業にするようアドバイスしています。

意見や判断の理由を引き出す

同研究所は毎年、小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力・学習状況調査を行っています。この春に実施された調査の結果を踏まえて、授業の改善方法を学校に向けて提案したのが『授業アイディア例』です。

今年の学力調査は、小学校で国語と算数、中学校で国語・数学・英語だったため、これに対応して、小学校では国語3例・算数3例、中学校では国語3例・数学3例・英語4例の計16例を紹介しています。その一部を紹介しましょう。

小学校の国語では、「目的や意図に応じて、自分の考えの理由を明確にし、まとめて書く」ことに課題があるとしています。そこで、学校内でけがが起きる時間や場所、件数や原因などを調査し、減らすための意見をまとめる授業例を提案しています。報告文や意見文を書く学習活動を行う際には、子どもに身近な題材や、「調べて報告したい」と必要性を感じられる題材を選ぶことがポイントだとしています。

中学校の数学では、「データの分布の傾向を読み取り、批判的に考察し判断する」ことに課題があるとしています。そこで、生徒の一日当たりの読書時間をアンケート調査し、「平均値」と「代表値」の違いに気付かせ、その理由を説明させる話し合いの例を載せました。

英語の即興力、先生がモデルに

今回、初めて調査が行われた中学校の英語に関しては、聞くこと・読むこと・話すこと・書くことの4技能の授業例を示しています。

来日予定の留学生からの音声メッセージを「聞いて」、アドバイスを英語で「書く」という技能統合型の問題は、正答率が8.5%と低いものでした。そこで、▽音声を聞く前に、活動の目的を把握する▽聞いた後に、情報を整理する活動を挟んで、その上で英文を書く……といった授業の流れを示しています。
また、「即興で伝え合う力」は、新学習指導要領で新たに設定された領域「話すこと[やり取り]」に当たります(他に「話すこと[発表]」)。調査では、対話文を聞き、その内容を踏まえて生徒が会話を続ける問題が出ました。これも正答率は10.5%(参考値)と低かったため、『授業アイディア例』では、英語の先生が生徒とのやり取りを楽しみ、会話のモデルを示すことがポイントだとしています。積極的に話し出せない生徒への話題の振り方も載せて、生徒がもう一度言ってみようと思える場面設定が必要だとしています。

新学習指導要領の全面実施が近づく中、この『授業アイディア例』は、「生きて働く知識・技能」をどう身に付けさせるかを、授業のイメージに落とし込んだものと言えます。調査対象の小6、中3以外の学年にも、また調査対象以外の教科でも、授業づくりのヒントになるのではないでしょうか。

(筆者:長尾康子)

※全国学力・学習状況調査 授業アイディア例
http://www.nier.go.jp/jugyourei/h31/index.htm

※全国学力・学習状況調査
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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