学校の「中」の地震対策は大丈夫?

子どもたちが1日の多くを過ごす学校の安全確保は、いつ襲ってくるかわからない自然災害に備える意味で、大変重要です。このほど、公立学校施設の耐震改修状況が明らかになりました。全国的には「おおむね完了」としていますが、未実施の学校も残っています。柱や梁(はり)だけでなく、設備や備品の安全対策も求められています。

耐震化率99.2%で「おおむね完了」

公立小中学校の耐震化率の推移を見ると、2002年度には44.5%だったものが、08年度には62.3%、12年度には84.8%、15年度には95.6%まで進み、国は「おおむね完了」としています。
残る未対策の地域や学校の取組状況を調べるため、今年4月にフォローアップ調査を行いました。対象は公立学校施設の全設置者(福島県双葉町および大熊町を除く)で、調査項目は(1)構造体(柱や梁、床など)の耐震化状況(非木造/木造)(2)屋内運動場等のつり天井等の落下防止対策状況(3)屋内運動場等のつり天井等以外の非構造部材(天井材、窓ガラス、内装材、外装材など)……の耐震点検・対策状況です。

その結果、耐震化が未実施の建物は、前年度から84棟減少して894棟、耐震化率は99.2%となりました。これは公民館の耐震化率(78.1%)よりも、かなり高い数値です。
耐震化が未完了の学校の設置者(自治体など)は前年度から30減少し、残りは142となっています。つり天井等の落下防止策に関しても、対策実施率は98.9%と100%に近づいてきています。

急がれる窓ガラスや本棚などの対策

一方、体育館などのつり天井等以外の非構造部材に関しては、まだ遅れがみられます。耐震点検の実施率は88.9%、対策実施率は43.0%にとどまっています。非構造部材とは柱や梁、床などの構造体とは別のもので、教室なら窓・ガラス、照明器具、ロッカーや本棚、テレビ、ピアノなどがあげられます。体育館なら、さらにバスケットゴールやピアノ、スピーカーなどの設備、両者に共通して内装・外装材も含まれます。
これらの非構造部材が地震時に落下や転倒すれば、子どもたちや先生方が直接けがを負うだけでなく、避難経路の通行の妨げや出火の原因になるなど、二次災害を招く恐れがあります。

国は今後の対応として、▽非構造部材を含めた未実施の設置者には、早期の耐震化完了を要請する▽老朽化した建物では、非構造部材の落下防止を含めた老朽化対策を推進する▽設置者の取り組み状況について、継続的にフォローアップを実施する……としています。安全点検のためのガイドブックを公表し、設置者や学校が定期的に点検を行うことも呼び掛けています。
非構造部材は、学校の中に無数にあります。転倒防止策が取られていても老朽化が心配ですし、ICT(情報通信技術)機器など新たな設備も次々に導入されてきます。耐震化には予算も必要です。

家庭でも、「地震のとき家具が倒れてくるかもしれない」「枕元にガラス製品を置くと危ない」という認識は持っていても、対策は後手になりがちです。学校も耐震化100%で終わりではなく、学校の「中」の地震対策が求められています。

(筆者:長尾康子)

※文部科学省 公立学校施設の耐震改修状況フォローアップ調査の結果について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/08/attach/1419963.htm

※文部科学省 学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)・(追補版)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/1291462.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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