AIと人間が共存する時代の教育

「将来、人間の仕事の多くはAIやロボットに代替されるのではないか?」 このような話を耳にされた方も多いと思います。しかし、国が目指す方向は「AI・ロボットの活用、共存」。では、AI・ロボットは、これからの教育にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

一人ひとりに合った最適な学びが実現できる

2020年に大学入試が変わり、小学校から順番に、中学、高校と学校での学び(学習指導要領)が変わります。大きな変化を来年に控えた今、国はすでにその次を見据えた検討を始めています。その背景には「Society5.0」があります。
Sosiety.5.0とは、狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く新しい社会を指します。インターネットで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことができる社会と言われています。これを実現するための技術として、人工知能(AI)やロボットの活用が欠かせません。これからの教育においても同様に、AIなどの技術が果たす役割はますます大きくなると考えられます。
現状、学校教育におけるパソコン(PC)やタブレットなどは、地方自治体が整備することになっているため、地域によって整備状況にかなりの差があります。しかし、最近は自分や家族のスマートフォン、PC、タブレットを学校に持ち込んで学習に活用するBYOD(Bring your own device)を実践する自治体や学校も増えつつあります。近い将来、全国すべての学校でこれらの情報機器を活用した学びが実現するかもしれません。
情報機器とクラウドを活用して、自分の学習した記録・履歴が蓄積できる仕組みは、すでに導入されつつあります。将来は、生まれた時から小・中・高校・大学、さらには社会人以降も含めた学びの全ての記録・履歴を、一人ひとりが持てる時代になるでしょう。そして、自分の学びをいつでもどこでも振り返ることによって、次に何を学べば良いかを自分で計画を立てたり、誰かに勧めてもらったりすることができるようになるでしょう。それは、一人ひとりに合った個別に最適化された学びが実現するということにほかなりません。

大人こそが、子どもにとって最大の教材

AI技術の発展で、どんどん便利な世の中になっていきます。しかし、決してAIやロボットが中心となる社会を目指しているわけではありません。人間では到底扱いきれない膨大で多様な情報(ビッグデータ)の解析はAIに任せることになるでしょう。人間はその結果を活用し、AIやロボットと共存しながら、経済発展と社会的課題(環境問題、エネルギーや食料の問題、高齢化に伴う様々な問題、地域間の経済的格差など)の解決との両立を図り、人間がより豊かに生きることができる社会に向かおうとしているのです。
そうした社会では、人間には「AIが解析した情報を読み取り次の指示に生かす力(データ・サイエンス)」や、「得た情報を判断してより良い方向に生かす力(倫理)」、また「想定外の出来事や多様な価値観に基づく対立・ジレンマにどう立ち向かう力」などが求められるようになるでしょう。
これらの力を身につけるために、教育は、わたしたち大人が受けてきたものとは異なる内容や方法に変わっていくと考えられます。そうなると、「学習や進学などについて、自分の経験に基づくアドバイスでは通用しない」と思われるかもしれません。しかし、過度に心配する必要はないと思います。情報を読み取り、次にどう生かすか、最善を尽くすためにどういう選択をするか、実行にあたりジレンマや対立をどう克服するか。これらは、わたしたち大人が常に職場や家庭や社会の中で直面していることです。
毎日の生活の中で試行錯誤し、成功を喜び、失敗してもそれをよい経験ととらえ次に活かす・・・ わたしたち大人が一生懸命に日々考え行動する姿を子どもに隠さずに見せることこそが、子どもたちにとっての生きた教材であり、強力なエールになると信じています。

プロフィール

黒木 研史 (くろき・けんし) 情報企画室長

黒木 研史 (くろき・けんし) 情報企画室長

教育関連の出版社において書店営業や商品企画、またインターネットサービスプロバイダにおいて教育関連コンテンツの配信業務などに従事し、2004年に(株)ベネッセコーポレーションに入社。教育におけるICT活用の効果について外部機関との共同研究や、WEB教材用の動画コンテンツの制作支援などを経て現職。現在は、教育行政動向等をはじめとする教育環境変化についての情報収集・分析、予測等を行う。

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