次世代の先生に必要な力は?

教員をめぐる課題は、新学習指導要領に応じた指導、多忙化解消、教員志望者の確保など、多様化しています。小中学校の教員養成の中心的な役割を担ってきた国立教員養成大学・学部では今、どのような取り組みをしているのでしょうか。
このほど公開された文部科学省の事例集から、これからの先生に必要な力が見えてきます。

付属学校も含め32事例を紹介

事例集は2018年7月に続き、今回で2回目の公表になります。国立の教員養成大学・学部などの特色ある好事例や先進的な取り組みについて聞き取りを行い、(1)国立教員養成大学・学部等全体(2)カリキュラム、養成環境(3)質の保証、評価(4)大学教員(5)外部との連携(6)教職大学院(7)付属学校、の項目ごとにまとめたもので、計32の事例が紹介されています(今回(4)は該当事例なし)。その中から、幾つかを見てみましょう。

国立教員養成大学・学部等全体の項目では、6大学を取り上げました。このうち岡山大学ではICT(情報通信技術)を活用した学習形態「eラーニング」で収集したビッグデータを活用し、子ども一人ひとりの学力向上策を作る技術を開発。次世代型の教育改革を目指しています。
カリキュラム、養成環境の項目に取り上げられたのは6大学です。大阪教育大学は、学生にノートパソコンを必携化。全学共通のICT科目を導入し、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)や業務効率化にICTを活用できる授業を開講しています。

付属学校の好事例は、9大学と多めです。東京学芸大学では、附属国際中等教育学校が国際的な大学入試資格である国際バカロレア(IB)認定校になっていて、日本各地にIB教育を広める拠点校の役割を果たしています。学部や教職大学院でも「国際バカロレア教員養成科目」を開設し、連携を深めています。
一方、静岡大学では附属浜松中学校が、公立学校や企業などと協力して理数才能教育事業を展開。理数系のコンクールで全国大会出場を果たすなどの実績を上げています。また、千葉大学では付属小学校・中学校・特別支援学校と連携して、「いじめ防止」体制の構築を進めています。

子どもの資質・能力を伸ばすために

こうした事例集は、2017年8月の「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書」を踏まえてまとめられたものです。報告書は国立教員養成大学に対してその機能を強化すると同時に、少子化に伴う教員需要の減少を見込んで、学部連携・統合など組織体制の再構築の検討を迫っています。

ALやICT活用、読解力向上、一人ひとりに応じた指導、小学校英語や道徳、プログラミング教育……と、新指導要領が教員に求めるものは少なくありません。子どもが自らの資質・能力を伸ばす教育を受けられるようにするためにも、国立教員養成大学の先進的な取り組みに期待が掛かります。将来、教職を目指す中高生にとって大学選びの目安にもなるかもしれません。

(筆者:長尾康子)

※国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する取組状況についてーVol.2
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/077/gaiyou/1416730.htm

※国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/077/gaiyou/1394996.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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