プログラミング教育、実施直前の課題は

2020年4月から新学習指導要領が全面実施となるのに伴い、小学校でもプログラミング教育が本格的に始まります。全国約半数の自治体は先行的に授業を実施していますが、自治体の規模により取り組みや内容に差が見られます。担当者の配置や適切な情報提供など、来年度の必修化に向けた課題は山積みです。

この1年で「授業実施」が増加

文部科学省は今年2月から3月にかけて、全国1,745の教育委員会に対し、プログラミング教育の取り組み状況についてインターネットで調査を行い、1,011教委から回答を得ました(回答率57.9%)。質問項目は▽プログラミング教育の担当者の配置 ▽2018年度の教委・管内小学校・教員の取り組み状況・内容▽小学校プログラミング教育の実施に関する予算要求状況……など14項目です。
得られた回答から自治体の取組レベルを4段階に分類したところ、先行的に「授業を実施している」自治体の割合は、2017年度の16.1%から52.0%へと、大幅に増加しました。授業実施まではいかないけれども「担当を決めて取り組んでいる」自治体も、13.5%から29.9%に増加。一方、「特に取り組みをしていない」自治体は56.8%から4.5%に減少しました。2018年度の間に、授業やその準備を始めた教委が多いことがわかります。

将来の学力格差にならない方策を

プログラミング教育に本腰を入れ始めた自治体が増加する中、懸念されるのは、自治体間の格差です。指定都市や中核市、それ以外の市、特別区などの大規模教委では「授業を実施している」が71.5%なのに対し、町・村などの小規模教委は31.9%と、2倍以上の開きが出ました。プログラミング教育の担当者が配置されていなかったり、担当者が教員経験者でなかったりする自治体では取り組みに遅れが見られ、とりわけ小規模自治体では、その割合が多くなっています。
また、自治体の規模にかかわらず、プログラミング教育を実施する際の課題として、80.6%が「ICT(情報通信技術)支援員の不足」を挙げています。これに次いで、「指導方法の情報不足」(75.4%)や「予算(教材費等)不足」(73.8%)も高くなっています。自由記述でも、「ICT機器の整備や予算にばらつきがあるのでプログラミング教育まで着手できていない」「ICT機器の設置を推進しているが現場では各教科等に具体的にどのように取り込んでいくか不安がある」「機器の整備に予算を計上したが、教材まで予算確保できない」といった環境の整備不足、または、環境は整っていても人材や教材の確保まで手が回らない現状も見えてきます。

この結果を受けて報告書は、▽プログラミング教育の基本的な考えや指導方法等の啓発・支援▽自治体の規模に応じた支援▽担当者の経験が十分でない場合にも取り組みができるような支援……を講じるよう、今後の施策の方向性を提示しています。
プログラミング教育に関しては、小学校が話題となっていますが、中学校や高校でも拡充・必修化されます。小学校は教科化されていないのに比べ、中学は「家庭・技術」で、高校は「情報Ⅰ」で、全員が学ぶことになります。小学校での環境整備や取り組み内容の格差が中学・高校での学力格差につながらないよう、自治体を挙げて遅れを取り戻すことが急務です。

(筆者:長尾康子)

※文部科学省「教育委員会等における小学校プログラミング教育に関する取組状況等について」(2018年度)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1406307.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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