消費税増税・令和時代の教育費を考える

ソニー生命『子どもの教育資金に関する調査2019」によると、「子どもの学力や学歴は教育費次第」にあてはまると回答した人は64.0%に上りました。もちろん言外に「ある程度のところまでは」という意味を含んでいるものと思われます。
それでも東京大学の学生の保護者の年収が高い(*1)ことは何かと話題になりますし、実際、子育て家計に占める教育費は、子どもが成長するにつれて伸びていきます。こうしたことが、教育費と学力は相関関係にあると感じる結果につながっているのかもしれません。

一方、理想通りの教育費を準備することはなかなか難しく、72.6%の保護者が子どもの教育費に不安を感じています(下図表)。その理由としては、「教育資金がどのくらい必要となるかわからない」が58.4%で最も多く、「収入の維持や増加に自信がない」37.7%、「消費税10%への増税」33.7%と続きます。とりわけ未就学児を持つ親は、70.5%が教育費の必要額がわからないを不安理由にあげているのが特徴的です。

教育費は「かかるもの」ではなく「かけるもの」

誰しもわからないことには不安を感じるものですが、教育費はかかるものではなく、保護者が子どものために意図してかけているものだという前提に立ち、「必要かどうか」「子どもの様子はどうか」「何を大切にしたいか」などの視点でみていきましょう。まずは「教育費は方針と手段で決まる。それは保護者が決めている」ことを意識することが大切です。

*1
東京大学「学生生活実態調査(2017年)」の調査結果では、現在の生計を主に支えている者の年間税込み収入平均額は、918万円となっています。

大学進学、海外留学費用は「かける教育費」の象徴

気づかぬうちに自ら選択して子どもに教育費をかけているものの、66.6%の保護者はそれを重いと感じています。成長段階別では、未就学児の54.4%に対し、教育費がピークを迎えた大学生の保護者は、82.1%が負担を感じているという結果になりました。

その一方で、子どもを大学等へ「多少の費用がかさんでも進学させたい」保護者は86.3%。大多数が費用よりも進学を優先させようとしています。海外留学や海外研修については、「多少費用がかさんでも経験させたい」が59.8%で、「費用がかさむなら経験させなくてよい」の40.2%を上回っています。
大学等への進学や海外経験は子どもが希望する場合も多いでしょうが、学費の面では保護者の支援が前提になるので、まさに「かける教育費」の象徴とも言えるでしょう。

「子どもの学力や学歴は教育費次第」という考えはこのあたりに最も表れているのかもしれません。長い人生の中では、大学・大学院進学や留学は目的ではなく手段ですが、多くを吸収できる若い時期の得難い経験になることは確かでしょう。

消費税がアップしても負担減の工夫はできる

月々の蓄えている子どもの進学費用の平均額については、2017年から2019年のわずか2年で、子ども1人につき1万2,513円から1万7,474円になり、約5,000円のアップ。これまで「子育て家計のため時は、幼稚園時代を除く小学校低学年まで」と言われてきましたが、これからは3~5歳の3年間もため時に変わります。政府が掲げる、幼児教育・高等教育の原則無償化には、72.6%の保護者が賛成と回答。中でも未就学児の保護者は85.1%が賛成で、他の就学階層よりも高い支持になっています。

10月からの消費税10%を不安視する人が多くなっていますが、学校教育費について消費税はかかっていません。社会政策的な配慮から授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、検定済み教科書などは原則非課税です。もちろん今後の社会情勢に応じて料金自体を値上げする場合もあり得ます。できるだけ吟味して受験校を選んだり、長期的な視野で進路を考えたりするなど、できる工夫で乗り切っていきたいものです。

消費税が影響を及ぼすのは、学校外学習費や、大学進学などで自宅外通学になることでしょう。おけいこ事や塾、賃貸アパート代など、固定費になりがちなものは、その必要性を十分に検討することが大切です。
ちなみに大学進学の通学方法では、保護者特に母親の60.2%が子どもの自宅通学を望んでいるという結果でした。自宅から通学ができれば仕送りは不要ですし、子どものアルバイト代が学生生活の足しになればより経済的です。

令和時代は多様化が加速

「令和」は「麗しい調和」……。新元号の意味について政府は海外に向けbeautiful harmony と説明しました。人口が増え経済成長を遂げていた時代は、均一な教育で生産性を高めてきたかもしれませんが、すでに少子高齢化と人口減少に向かっています。

政府もその対策として一億総活躍をしてもらい、外国人の就労を緩和して労働人口を確保し、消費税率のアップで財源の確保に乗り出そうとしています。家族、働き方、そして教育、令和は「多様化」時代の始まりとも言えるでしょう。
一つの価値基準で測れなくなるということは、例えば「教育費はかけるもの」と考えるなら、「何にかけるか」を決めることになります。情報を集めて熟慮すれば、むしろ子どもの可能性は広がるかもしれません。

最先端の科学技術などを学ぶ場合は別として、経済的負担が難しい家庭の場合は、通信制大学等で働きながら学ぶ方法もあります。一度社会人となり資金をためて海外留学や大学院で学ぶ人、資格の取得などを目的に仕事との二足のわらじで専門知識を身につける人など、大学時代だけにとどまらない学びのスタイルは、さらに広がることでしょう。時間を区切って1つのことに集中するもよし、同時並行の「二刀流」でがんばるもよし。

多様化が加速する令和時代は、ため時が広がる子育て制度を利用しながら、保護者自身も学びながら子どもの教育を考えていく時代になりそうです。

出典:
ソニー生命 子どもの教育資金に関する調査2019
https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/nr_190228.html

東京大学 2017年 学生生活実態調査報告書
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400107600.pdf

プロフィール

中上直子

中上直子

編集ライター兼ファイナンシャル・プランナー。教育・育児、マネー、防犯など家庭関連のテーマで執筆活動を行う。子どもの価値観を育むワークショップや消費者向けセミナーも展開中。高1男子の母でもある。「身の回りの税金がわかる」(西東社)などの執筆も担当。

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