学校の朝読書は短編が人気

学校で1時間目が始まる前に本を読む「朝の読書」を実施しているクラスや学校は多いのではないでしょうか。子どもたちに多く読まれているのは、人気作家や定番シリーズ、短編などです。どの教科でも読解力がますます問われる中、文章に触れる読書の重要性は高まっています。

人気作家や原作漫画も読書の入口に

出版取次会社のトーハンは、先ごろ「2018年度『朝の読書』で読まれた本」を発表しました。朝の読書を行っている90校から学校図書館の貸し出しベスト5をまとめたものです。調査を行った「朝の読書推進協議会」は、その傾向を▽小学校では「かいけつゾロリ」などのシリーズ物、中学校・高校では有川浩、東野圭吾など定番シリーズ・作家の人気が継続▽短編小説を収めたシリーズはどの学年でも人気。朝読書の時間内で読める「5分」シリーズなどが人気▽読書や勉強の入口として漫画も読まれている……などとしています。

身近なのは電子書籍より紙の本

文部科学省などの調査から子どもたちの読書の状況を見ると、1か月に1冊も本を読まない子どもの割合は年々少なくなっています。過去1か月間に紙の本で読書をした子どもの割合は、小学生で69.8%、中学生で62.1%、高校生で47.4%となっています。

一方、過去1か月で電子書籍を読んだ子どもは小学生で16.1%、中学生で18.7%、高校生で21.4%にとどまっています。「紙の本は読んだが、電子書籍は読んでいない」と答えた小学生は55.1%、中学生で45.4%と約半数を占めています。
スマートフォン(スマホ)やタブレットなどの端末を使い、欲しい電子書籍をダウンロードして購入して読むのは、子ども一人ではなかなかできないことです。子どもたちの間では、まだまだ紙の本で読むのがポピュラーな読書の方法と言えそうです。

その意味で、学校での読書活動や学校図書館の充実は、子どもたちが読書に親しむきっかけとして、大切な意味を持ちます。紙の本を手に取る動機として、「学校の活動で」(小学生38.3%、中学生34.6%)と答えた子どもは、「本を読みたくて」(小学生45%、中学生36.3%)に次いで多いからです。

入試でも重視される「読解力」にも

PISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)は、日本の子どもの「読解力」に課題があると指摘してきました。それを受けて学校では、「言語活動」の取り組みが重視されるようになりました。近年の高校の入試問題を見ると、国語以外の科目でも読解力を必要とする出題傾向が強くなっています。
読書だけで読解力が高まるという単純な話ではありませんが、少なくとも文章を目にする機会を増やすことは、書かれた内容を読み取ろうとする力を付けるトレーニングになります。
家庭でも地域の公共図書館を積極的に利用するなど本に親しむ環境を整えることが、これからの入試にも対応する力につながっていくことでしょう。

(筆者:長尾康子)

※トーハン 「2018年度『朝の読書』で読まれた本」を発表
https://www.tohan.jp/news/20190515_1404.html

※文部科学省 子どもの読書の情報館
  2018年度「子供の読書活動推進計画に関する調査研究」報告書概要版
http://www.kodomodokusyo.go.jp/happyou/datas.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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