暗算や計算で鍛えられる「本番力」

「そろタッチ」というそろばんアプリを開発し、そろタッチ教室を運営されている山内千佳さんは、そろタッチ教室では、暗算する力や計算力が育まれるだけでなく、本番にこそいつもの力が発揮できる「本番力」を鍛えることができるといいます。
どういうことなのか、計算や暗算が広げるお子さまの可能性について伺いました。

学習の成果は、リアルな場面で活用できてこそ

EdTechやICT教育が発展するにつれて、Webやアプリ上ではできることが、ペーパーテストやリアルな生活の場など環境が異なるとできなくなってしまうことがあると思います。いくらWeb上で優秀でも、いざという場面でその成果が活用できないのは、残念なことです。

実際にお子さまが足を運ぶそろタッチ教室では、「本番力」を鍛えられるという長所があります。たとえば、習熟度の違う子どもたちが全員一緒に問題をリレー形式で解いていく課題があります。リレー形式ですから、誰かが間違えたり、時間がかかってしまったりするとよい結果は出ません。
最初、子どもたちは、「一人でやるのはいいけど、リレーは嫌」と言ったり、間違えて泣いてしまったり……なんてことも起こります。その代わりプレッシャーに打ち勝ち、みんなで全問正解できた時の喜びはひとしおです。これを繰り返すうちに、画面の中だけでなく、現実のリアルな場面でも知識が活用できる「本番力」が鍛えられるのです。

こうした課題があることを説明すると、「うちの子には無理かもしれません」とおっしゃる保護者のかたもいらっしゃいます。子どもが、「失敗するのが怖い」「失敗は恥ずかしい」と思い、やってみる前に諦めてしまうという場面を多く見ているからだと思います。たしかに、失敗するのは大人でも怖いもの。だからこそ、できた時には必ず保護者のかたが大いに褒めてあげると、楽しみながら無理なく続けられると思います。

計算を通して世界の人々とコミュニケーションができる

数や算数を学ぶことで広がる可能性は、他にもあります。
たとえば、インドの暗算の達人、タッカーくんという13歳の男の子が日本の大会出場のために来日し、生活を共にする機会がありました。彼は、カレンダー計算(年月日から曜日を計算すること)がとても速く、世界大会での入賞経験もあります。
私は、彼が大会に向かう電車の中で初めて会ったネパール人と話しているのを見ていて、感激したことがあるのです。ネパール人が「僕は○年○月○日に△△したんだよ」と言うと、タッカーくんは、「それ、水曜日でしょう」と返していました。「なんでわかったの?」と驚くネパール人に「僕、カレンダー計算が得意なんだ」とタッカーくん。カレンダー計算を通して、新しい世界が生まれたのを発見した瞬間でした。他にも、計算を通じて、国や文化を超え、世界がつながった瞬間を感じる経験はたくさんありました。まさに、そろばんや暗算はツールに過ぎず、その本当の価値は、世界の人々とコミュニケーションができるということだと思います。

10年後20年後、今のお子さんが成人するころには、どんな未来が待っているでしょうか。どんな社会であったとしても、気付いたら「あれ、計算が役に立っていた」ということがあるかもしれませんね。

***書籍紹介***

どうしたら子どもに自主性が身につくのか?何をしたら将来役に役立つのか?
真剣に考え、逡巡している親御さんは多くいらっしゃるでしょう。本書はEdTech教室で実践されている「計算力」に焦点を当た、子どもの自己肯定感を高め、可能性を広げる教育法を紹介。
「子どもの気持ちがわからない!」とお悩みの親御さんたちに、たくさんのヒントが詰まっていますので、ぜひご一読ください。

執筆者プロフィール

山内千佳(やまうち ちか)

神奈川県生まれ。東京女子大学文理学部数理学科卒業後、1989年日本興業銀行入行。1993年からCitibank東京支店にてデリバティブ商品のトレーディングと商品開発業務に従事する。2009年、株式会社Digika設立。2011年に珠算教室「かるトレ」開校、2014年ママスタッフとともに「そろタッチ」を考案し、開発を進める。2019年4月現在、国内外に約70教室、生徒数約2,000名。自ら子育てを実践しながら、国内外の教室や大学、イベントをまわりながら、これからの世界に必要とされる能力——「暗算力や算数・数学的思考力」の育成・活用を日々探求している。

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