次のグローバル教育は?SGH後継事業

文部科学省は、これまでの「スーパーグローバルハイスクール」(SGH)事業の取り組みをもとに、新たな事業を開始しています。人類史上5番目の新しい社会である「Society(ソサエティー)5.0」に向けた人材育成の一環として、イノベーティブ(革新的)なグローバル人材を育成するためです。このたび、2019年度の採択機関が決まりました。どのような教育を行うのでしょうか。

狙いは「創造社会」担う人材の育成

新しい事業は、「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」といいます。大学教育の先取り履修など高度な学習内容を、高校生の興味・関心、特性に応じて履修できるような学習プログラムやコースである「WWLコンソーシアム」を整備するのが狙いです。
今年の初めに公募が行われ、17の教育機関が構想計画書を提出。その中から、10の拠点校が決定しました。 首都圏では筑波大学附属坂戸高校、東京都立南多摩中等教育学校、渋谷教育学園渋谷高校の3校が指定されています。

新事業の背景には、人工知能(AI)やICT(情報通信技術)の発達に伴って、人材育成の変革を求める声が高まってきたことが挙げられます。すべてのモノがインターネットでつながる「IoT(Internet of Things)社会が到来しつつある今、それらを活用して新たな価値を生み出せる人材や、社会課題を克服する創造性の高い人材を輩出できる教育へと転換する必要性を、政府も訴えているからです。
具体的には、文系・理系の両方を学ぶ高大接続改革を目指し、▽グローバルな社会課題研究のカリキュラム開発▽外国語や社会科学等の複数の教科を融合した「グローバル探究」等の科目の設定▽国内外の高校生が参加する「高校生国際会議」の日本開催▽海外のハイレベル人材と日本人高校生の探究活動……などを支援する構想です。

「レガシー」を次世代へ

現行のSGH事業が目指すものと、まったくかけ離れているというわけではありません。SGHは指定校数が120を超す中、3年目の中間評価で「経費の減額または指定の解除が適当」「計画等の変更が必要」など、文科省から辛口の評価を受ける学校があったことも事実です。また、保護者や学校自身がSGH指定を過度にブランド視する傾向も、関係者の間では懸念されていました。

それを差し引いても、英語の授業改善にとどまらず、生徒が興味関心に基づいてテーマ設定をし、国内外で探究的な研究を経て実践に移したり、その成果を発信したりした取り組みは、新学習指導要領(高校は2022年度入学生から)が目指す資質・能力の育成を先取りしたという点で、評価されてよいでしょう。
SGH事業は、2016年度の指定校が研究期間を終える来年度末で終了となります。得られたノウハウや成果をレガシー(遺産)として、各校が次の時代の学校づくりにつなげていくことが期待されます。

(筆者:長尾康子)

※WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアムの構築に向けて(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1412062.htm

※スーパーグローバルハイスクール
http://www.sghc.jp/


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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