新元号「令和」の由来と書き方は?
4月1日、平成に代わる新しい元号が「令和」と発表されました。皆さんは、どのような印象を持ったでしょうか。日本最古の和歌集とされる万葉集を由来としていることから、令和元年は「万葉集ブーム」として記憶に残りそうです。
和歌ではなく「序文」から
万葉集は奈良時代にまとめられた、日本最古の和歌集です。しかし「令和」のもとになったのは和歌ではなく、梅の花を詠んだ32首の和歌に先立つ「序文」といわれる部分です。
「初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す」……つまり「初春の佳き月で、気は清く澄みわたり風はやわらかにそよいでいる。梅は佳人の鏡前のおしろいのように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香りのように匂っている」(伊藤博訳注『万葉集 一 現代語訳付き』第一巻、角川ソフィア文庫)という、穏やかな早春の情景が描かれた一文から取ったものです。
保護者の方がお子さまに分かりやすく説明するのであれば、「このお正月は、すっきりとしたお天気で、風がやわらかくそよいでいる。梅の花が白く咲き、蘭の花のよい香りがただよっている」ことであると伝えるのはいかがでしょうか。
この歌会を開いた大伴旅人が居を構えていた福岡県太宰府市や、万葉集に縁のある奈良も脚光を浴びるなど、ちょっとした万葉集ブームが起きています。
「令」の正しい書き方は
テレビでは、決定した元号の額縁を掲げる菅(すが)義偉(よしひで)官房長官の姿がたびたび放映されましたが、その手書き文字を見て「『令』ってどう書くんだっけ?」と思った方もいると思います。印刷された活字と手書きとでは、字の形が異なるからです。
手書きでは、最後の5画目を「ヽ」と書くことが多いですが、印刷物でよく見る文字は5画目が「|」。しかし、発表された時の「令」は手書きにもかかわらず「|」でしたし、教科書に用いられる「教科書体」という書体では「ヽ」になっています。
実は、どちらでも構わないという見解を文化庁の文化審議会国語分科会が2016年2月に指針として出しています。2010年に告示された常用漢字表に基づき、 漢字の「正しい字形」は1つだけでなく多様な形があること、また、手書きする際は手書きの習慣に従ってよく、印刷文字の通りに書く必要はない、としています。
報告書はまた、「手書き文字と印刷文字の字形のどちらか一方が正しいとみなされたり、本来は問題にしなくてよい漢字の形状における細部の差異が正誤の基準とされたりするといった状況が生じている」現状を挙げ、特に学校関係者においては常用漢字表の「(付)字体についての解説」の理解を深め、柔軟な評価が必要だとしています。ちなみに「令」は小学4年生で習います。
文化庁のサイトにある指針の代表音訓索引で引いてみると、確かに「令」にはさまざまな形があり、どれも間違いではないことが分かります。この索引で「ワ」や他の音訓をクリックすると、「和」の字もその他の字も、いろいろな形があるのに驚かされるでしょう。
(筆者:長尾康子)
※文化庁 文化審議会国語分科会
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/jitai_jikei_shishin.pdf
※文化庁 「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」の代表音訓索引
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/joyokanjihyo_sakuin/
参考:たのしい万葉集
https://art-tags.net/manyo/five/m0815.html