小学校受験ってどんなもの?近年の受験動向
「お受験」などと呼ばれ、以前は経済的に余裕のある特別な家庭がするものというイメージがあった小学校受験ですが、近年は受験者が増える傾向にあります。
そもそも小学校受験とはどのようなものなのでしょうか。
近年の小学校受験事情に詳しい、1979年発足の幼児教室「富士チャイルドアカデミー」校長の前宏美氏に伺いました。
どこが違う? 私立小学校・国立小学校の教育
とある私立小学校の校長先生が「公立小学校の教育をデパートだとすれば、私立小学校の教育は専門店」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
建学の精神に基づき、教育理念を明確に打ち出しているので、それに賛同して「同じ方向を見て子どもの教育ができるご家庭に来ていただきたい」という言葉もよく聞きます。公立に比べて、各校のカラーがはっきりしているんですね。
一方、国立小学校(国立大学附属小学校)は、教育理論と実践に関する研究校としての位置付けが強く、研究された先進的な授業が受けられるという特徴があります。国立付属各校の校風は私立ほど明確ではありません。
私立小学校と国立小学校に通う小学生を合わせると全国の小学生の2%未満(平成30年度現在)ですが、小学校受験をされるご家庭は、近年増加傾向にあります。その背景には「小学校6年間の間に、より豊かな学習環境を与えたい」と望む保護者のかたが増えていること、大学入試改革や私立大学の定員厳格化に伴う大学付属校人気、それと、大変せちがらいお話ですが、経済状況が若干上向いていることに関係があると思います。
サラリーマン家庭の小学校受験が増加
私立小学校の場合、卒業生のほとんどが系列の附属中高に進学、または全員が中学受験をしますから、最低でも6年間、長ければ16年間の学費を払うだけの経済的余裕のあるご家庭でないと、進学は難しくなります。ただし、私立小学校の中でも、初年度納付金が約60万円~186万円と、教育費にはかなり幅があります。
国立小学校の場合、授業料がかからないので私立よりはずっと安い教育費ですみますが、制服代や通学の交通費のほか、保護者の会の会費や後援会の費用等を求められる場合もあり、公立よりはかかります。
以前は一部の経済的に豊かなご家庭のかたが私立小学校を受験するケースが多かったのですが、近年はサラリーマン層で共働きのご家庭の受験も増えています。受験家庭の増加に伴い、そのニーズも多様化していますが、その代表的なものとして「大学附属校に行かせたい」「中学受験をさせたい」「英語教育の充実」「アフタースクールの充実」などがあります。
中学受験との関係は?
前述のニーズのうち、大学附属校を希望されるかたが数としてはいちばん多いと思います。ただし、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部といった有名私立大学附属の私立小学校は難易度が高く、学費も高額であることがほとんどです。そういった現実を反映して、中学受験での実績を上げている小学校にも人気があります。
首都圏でいえば、たとえば洗足学園、東京都市大学付属、宝仙学園などが挙げられます。また、男の子の場合、目黒星美学園、聖ドミニコ学園など、女子中高一貫校の付属小学校に入れて中学受験をさせるというご家庭も増えています。
中学受験のための小学校受験なんて……と思われるかもしれませんが、「中学受験をするのが当たり前」の環境だから私立小学校を選ぶ、というかたも多いのではないかと思います。生徒のほぼ全員が私立か国立の中高一貫校を志望しているため、お子さまが「なぜわたしだけ塾に行かなくちゃならないの?」と不満に思うことも少ないし、保護者のかたは周囲の目を気にしなくてすむわけです。
中学受験に対する考え方は学校によって異なりますが、進路サポートがしっかりしているところは多いですね。小学校のカリキュラムは5年生までに終えてしまい、6年生では問題演習の時間を取っているところもありますし、授業ではあくまでも基礎基本を重視し、志望校の受験対策は各自塾などで行ってくださいというスタンスの学校もあります。
英語などの独自教育やアフタースクールへの期待も
英語教育に力を入れている私立小学校は多いですが、理科や算数など英語以外の授業も英語のみで行うなど、徹底したバイリンガル教育を取り入れている学校、世界の環境問題や食糧問題といったテーマを取り上げ、グローバル教育を英語で行う学校など、そのカリキュラムはさまざまです。
また、共働きのご家庭のニーズを反映し、学校内に学習スペースがあり、宿題などを見てくれるスタッフが常駐していたり、スポーツや芸術、英会話などのアフタースクールを充実させている学校も人気がありますね。