ICTツールの導入で、よりよい学校と家庭の連携を

ICTツールは、学校の先生が子どもたちと接する時間を作りやすくするほか、先生の業務を効率化し、「働き方改革」を実現するためにも重要性が高まっています。

ICTで情報共有・ペーパーレス化

中央教育審議会は2019年1月に働き方改革の答申を公表しましたが、文部科学省に求める取り組みとして校務を効率的に行うためのキーワードの一つに、ICT機器の活用があります。勤務時間の把握のためのタイムカード導入や、授業の準備や成績処理などでの活用を促しています。

企業であれ学校であれ、組織がICTツールを導入する目的は、ある程度共通しているのではないでしょうか。▽データの共有や蓄積▽書類作成や集計作業の効率化▽連絡のスピードアップ……といったことが挙げられるでしょう。
ICT活用に関する研究を続けてきた学校の中には、すでに働き方改革に通じる成果が出ているところもあるようです。では、どのような使い方をしているのでしょうか。

ある小学校では、「校務支援システム」と呼ばれる学校専用のシステムを使いこなして、作業の効率化を進めています。学校には、子どもたちに配るプリントだけでなく、職員会議の資料や行事の予定表、先生方へのお知らせ文など、さまざまな書類があります。これらをPDF化してサーバー上で共有し、どの先生もすぐに自分のパソコンから探せるようにしています。行事の企画について、昨年と同じ資料をアレンジしたい、昨年の同じ学年ではどのような授業をしたのか指導案を見たい、といったときにすぐに利用できて便利だといいます。

この学校では、通知表もデジタル化し、先生が手書きをするのをやめました。最初は「暖かみがなくなるのでは?」と不安がる先生もいたそうですが、▽オリジナルの表紙を付ける▽6年間が見渡せるファイル式の通知表にする——など工夫をしたところ、「デジタル化してもっとよくなった」と保護者にも好評だったそうです。校長先生は「保護者の通知表を大切に思う気持ちを大切にして、工夫した」と話していました。

首都圏の私立中学校の例ですが、生徒総会で全員がタブレット端末を片手に講堂に集合、ダウンロードした資料を見ながら、ペーパーレスで審議を進めているといいます。
もともとは授業で活用するために導入しましたが、生徒が生徒会活動にも取り入れるようになり、それまで先生が手伝っていた資料を印刷してとじる作業が完全になくなったそうです。生徒もタブレットさえあれば「資料忘れ」がなくなるので総会がスムーズに進行するようになったとのことでした。

活用にはWi-n-Winの気持ちで

これらの例は、数年前からICTを活用する中で、徐々に整ってきたものです。学校のICT整備は「民間や個人レベルなら、とっくにやっている」と思われるようなことも、まだこれから、というところも少なくありません。特に公立学校の場合は自治体の財源不足がネックです。年度末に導入が決まっても、実際の導入や稼働は夏休み明けにというケースもあるのです。

「導入までが大変なので、その後の活用法まで構想できない学校もある。うまくいくコツは、先生も子どもも保護者もウィンウィンになる工夫を考えること」と前述の小学校校長は言います。
学校の働き方改革は子どもたちのため、という本来の目的を達成するためにも、ICTツールを導入する中で、よりよい学校と家庭の連携を生み出すことが求められているのではないでしょうか。

(筆者:長尾康子)

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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