幼少期の学びに向かう力が小学校段階での学力へ
幼少期に養った学びに向かう力が、その後の成長に影響するというと驚かれるでしょうか?
今回、年少児期から小学4年生までの縦断調査で見えてきたのは、そんな驚くべき事実でした。さらにこの調査では、学びに向かう力は家庭でのどのような働きかけで養われるのかという点にも注視することで、幼少期の保護者の関わり方のポイントも見えてきました。
教育改革で「学びに向かう力」や「思考力・判断力・表現力」がより求められるようになる昨今、注目の「非認知スキル」調査の結果をお届けします!
年少児期に学びに向かう力が高いと小学校段階で思考力も高くなる!
近年、「非認知スキル」または「学びに向かう力」に注目が集まっています。これは、文字や計算などテストで測りやすいものではなく、いろいろな人と協調する力や粘り強くやり抜く力、好奇心などを指します。
現在、世界ではこれらの力の重要性に注目が集まっているのです。
というのも、アメリカのペリー就学前教育の研究で、幼児期に「非認知スキル」を身につけることが社会人での成功につながるという結果が発表されたからです(※)。
今回、ベネッセ教育総合研究所では、年少児期から小学校4年生までの7年間で約400人の子どもたちの発達を追う調査を行いました。その結果、幼少期の学びに向かう力がその後の学習習慣や思考力などに重要であることが見えてきました。
【図1】は、年長児の頃に学びに向かう力のひとつ「がんばる力」が高い子どもほど、小学校1年生で勉強をしていてわからないとき、自分で考え解決しようとする」という学習習慣がより高く身についているということを示すグラフです。
「がんばる力」とは、「物事をあきらめずに挑戦する」「自分でしたいことがうまくいかないときでも、工夫して達成しようとすることができる」などの複数の項目から構成されています。
【図1】年長児のがんばる力が低学年の学習習慣に結びつく
低学年時の学習習慣は小学校高学年の言語スキルにつながる
小学校低学年での学習習慣は、小学校4年生の言葉のスキルにつながります。小学校低学年での学習習慣は、小学校4年生の言葉のスキルにつながります。
低学年で学習習慣が身についている子どもには、小学校4年生で「ノートを整理して書いている」「自分の言葉で順序たてて、相手にわかるように話せる」などの言葉のスキルが身についていました。
なお、思考力も言葉のスキルと同様の傾向が見られました。
【図2】低学年の学習習慣は小学4年生の学習の伸びにつながる
今回の縦断調査では、年少児期から小学4年生までの成長を連続して見ています。その結果、幼少期の学びに向かう力が土台となり、小学校低学年での学習習慣が身につき、小学高学年の言葉のスキルや思考力へとつながっていることがわかりました。
保護者のどのような関わりが学びに向かう力を伸ばすのか?
学習習慣や学力につながる、幼少期の学びに向かう力。これはどのように育んでいくことができるのでしょうか?
今回の調査の結果からは、親が子どもの意欲を大切にする態度や思考を促す関わりが、子どものがんばる力につながっているということがわかりました。
「思考の促し」とは、親が子どもにただ考えることを促すことではなく、適切なヒントを与えたり、上手に子どもが言いたいことややりたいことを受け止めて引き出したりしてあげたりする関わりです。
難しく考えず、それを実現するためにまず日常の、遊び方から見直してみてはどうでしょうか。子どもと一緒に「ことば遊び」をしたり、一緒に数を数えるなどのやりとり遊びを通して、子どもが楽しみ、がんばろうとしている様子に注目し、褒めて、自信をつけさせてあげてください。このような積み重ねが、学びに向かう力を養うことにつながります。
また、しかる前に理由を聞いたり、話し合ったりする接し方もよいでしょう。
読み聞かせも、絵本の世界を介して親子でのやりとりを楽しむことができる良い関わりのひとつです。
小学生になると読み聞かせをやめてしまうご家庭も増えるのですが、お子さんが文字をひとりで読めるようになったとしても、小学校3年生くらいまでは読み聞かせを続けるとよいでしょう。
このように保護者が、子どもの「思考を促す関わり」や「意欲を尊重する態度」を意識することで、学びに向かう力を伸ばしていくことができるのです。
【図3】「思考を促す関わり」や「意欲を尊重する態度」の重要性
「毎日忙しくて、とてもじゃないけれどきめ細かく子どもの相手はできない……」、もしかしたら、そんなふうに思ってしまう保護者の方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、大丈夫です。今回の調査の中からお母さんが働いているいないにかかわらず、子どもの学びに向かう力に影響を与えることがわかってきたからです。また、保育園か幼稚園かの違いもありませんでした。
お忙しい保護者の方ならば、子どものために特別に時間を取るのは難しいかもしれません。その場合には、送り迎えの時や、家事をしながら子どもの話に耳を傾けたり、質問をしたりすることでもOKです。
大事なのは、意識を持ってお子さんと接することだといえるでしょう。
今回は幼少期の学びに向かう力を養う重要性をお伝えしましたが、こうした力は小学生以降でも伸び続けます。お子さんがいくつになっても、自分で考えることができるように関わったり、意欲を尊重することが大切だといえそうです。
※ペリー就学前教育ジェームズ・ヘッグマンの「ペリー就学前計画の実験」
1960年代から経済的に恵まれない3〜4歳のアフリカ系アメリカ人の幼児を対象に40年に渡って行われた研究。
充実した就学前教育を受けた子どもと、受けなかった子どもへ40年間の追跡調査を実施。その結果、教育を受けた子どもは就学後の学力だけでなく、高卒率、持ち家率、平均所得が高く、かつ、生活保護受給率、逮捕者率が低いという違いが出た。
この結果により、非認知的スキルの力が大きく影響を及ぼしていることがわかった。
<こどもちゃれんじ>や「進研ゼミ 小学講座」では、年齢・発達に合わせて「学びに向かう力」を伸ばす教材をご用意しています。
<こどもちゃれんじ>では、自分からやってみたくなる、いろいろな方法でできる、自分の手で答えを導き出せることにこだわった教材作りをしています。例えば、ひらがなの学習でわからない字があっても、自分で書き順を調べて書けるような教材をセットでお届けすることで、自分で最後まで取り組める体験を繰り返すことができます。また、教材で「おうちのかた向けの声かけ例」を掲載し、家庭での関わりかたに役立てていただけるような提案をしています。
また、「進研ゼミ 小学講座」では、小学校1~3年生向け講座でおうちのかた向けにまるつけや指導のしかた、声かけのコツをお届けしたり、小学校4年生以上はお子さま自身でできるように、まるつけポイントをマンガで楽しく解説するなど、自立学習習慣が身につけられるような工夫をしています。
教材の詳しい内容は以下よりご覧いただけます。ぜひ一度、ご検討ください。
<こどもちゃれんじ> https://www2.shimajiro.co.jp/
「進研ゼミ 小学講座」 https://sho.benesse.co.jp/