高校生は海外でどんな学び方をしている?

2019年の夏休みは、国の奨学金で海外へ留学する高校生が増えそうです。期間は2週間から1年とさまざまですが、自分なりのテーマを持って積極的に学ぼうとする姿勢が、観光旅行とは違った経験をもたらしてくれそうです。

高校生の留学プログラム、希望者が過去最高に

官民が一体となって若者の海外留学を支援する「トビタテ! 留学JAPAN」は、高校生にも徐々に認知されてきています。高校生の応募は年に1回で、学校を通して申請するのですが、その第5期の応募状況が過去最高となりました。

応募生徒総数は2,595人。昨年の1,781人から約1.5倍に増えています。内訳は、国立高校の生徒が228人、公立が1,075人、私立が1,292人となっています。応募生徒の在籍学校数は993校(国立58校、公立507校、私立428校)となり、こちらも昨年より増えています。採用数が今回から増えたことを見逃さない、しっかり者の高校生も増えているようです。
「トビタテ!留学JAPAN」は返済不要の奨学金が用意されるため、採用までには審査があります。成績や語学力は不問とされていますが、留学の目的や意欲と、何をどのように学ぶのか留学計画が問われます。

将来の生き方に留学を生かす

では,これまでこの制度で学んだ高校生は、どのような留学生活を送っているのでしょうか。2月に文部科学省で行われた留学生による、第4回報告会の様子が公開されています。全国から選抜された高校生10名、大学生11名がプレゼンテーションを行いました。
そこでは、▽宇宙工学エンジニアになるためにアメリカで3週間、語学研修を受講する▽カナダの芸術学校で3週間、映画制作とストーリーテリングを学び、将来は漫画家を目指す▽祖父母が住む港町の観光振興を目指し、カナダの世界遺産で2か月のインターンシップ留学をする……など、単に語学力を磨くだけでなく、自分の将来の生き方や、目指す目的のために留学を一つのステップとして捉えていることがわかります。

このプログラムには、留学の事前・事後研修や「オフ会」など参加者同士の交流の場も設けられ、留学経験を広く伝えることで、自分を高めていくチャンスも広がっています。家族や友達といった身近にいる人たち以外にネットワークを広げる場が得られそうです。
保護者世代の考える留学は、どうしても語学習得にイメージが傾きがちでしょう。そうしたプログラムは、既に高校の海外修学旅行などに含まれていたり、私費で気軽に参加できるものも増えています。
奨学金で行くなら、留学を、自分が変わるきっかけを得るためではなく、大学進学やその後の学びにつながる、未来の選択肢を広げるものとして計画的に準備する必要があることがわかります。

今年4月に高校1年生となる生徒を対象とした「アカデミック(テイクオフ)」コースは、募集締め切りが4月22日となっています。留学に興味を持つ中学生は、高校3年間の過ごし方として「留学する」ことを含めてイメージを膨らませてみてはどうでしょうか。

(筆者:長尾康子)

※トビタテ!留学JAPAN
https://www.tobitate.mext.go.jp/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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