高1からネットショッピングの正しい理解を

文部科学省は高校の家庭科において、3年生で家庭科を履修する場合、2年生までに消費者教育を教える方針を固めました。成年年齢が18歳に引き下げられることに伴うものです。これからは高校生段階から、契約について自分で判断し行動できる力を身につける必要があります。

成年年齢引き下げで前倒し

「契約」というと、土地や建物、自動車の購入など、高校生の生活とはかけ離れたもののように感じますが、実はコンビニで商品を買うことも民法上は「契約」が成立していることになります。その額がお小遣いの範囲を超えるような場合、保護者の同意を得ずに交わした契約は取り消すことができます。若者が陥りやすい消費者トラブルはネット関連が多く、それを回避できる方法を、卒業するまでに理解することが、これまでの高校での消費者教育でした。

ところが、2018年に民法が改正され、22年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられることになりました。多くの高校生は第3学年在学中に成人となり、18歳を過ぎると、契約に保護者の同意は要らなくなります。裏を返せば、保護者が契約を取り消すことができなくなります。そのため、消費者教育を第1・2学年のうちに学び終えておく必要が出てきたのです。

文科省の指導要領改正案では、▽2020・21年度入学生は「家庭基礎」「家庭総合」「生活デザイン」の3科目で、消費生活に関する内容を第1・2学年のうちに履修する▽新高校学習指導要領が実施となる2022年度以降の入学生は「家庭基礎」「家庭総合」の消費生活に関する内容を1・2学年のうちに履修する……としています。

自立した消費者への一歩に

文科省は昨年夏に、成年年齢引き下げを見据えた環境整備の推進を通知しました。中でも「消費者教育の推進」は最重要課題として、消費者庁、法務省、金融庁と連携し、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」を作成、2020年度までを集中強化期間として取り組むとしています。今回の家庭科での改正は、その一環として行われるものです。
若者が消費者被害・事故に遭うケースは、後を絶ちません。インターネットでのショッピングやスマートフォンによる決済など、取引が保護者の目の届きにくい場所で行われる機会が増えるため、18歳になったばかりの高校生が悪質業者に「狙われる」可能性も大いにあります。

消費者庁は、高校生向け消費者教育教材「社会への扉」を活用し、トラブルに遭ったときの実践的な能力を身につけるよう呼び掛けています。法務省においても、「消費者保護」にも触れた高校生向け教材を今年度中に作成する予定です。
成年に達すると、自分の意思でさまざまな契約ができるようになります。進路や就職なども親権に服さず、自分の意思で決められるようになります。10年有効のパスポートや、公認会計士や司法書士などの国家資格を得る年齢も、引き下げられます 。 消費生活について、高校生が早期に学び、行動できる力を身につけることが、自立した社会人への第一歩につながるようにしたいものです。

(筆者:長尾康子)

※文部科学省 高等学校学習指導要領家庭科の履修学年に関する改正に対する意見公募手続(パブリックコメント)の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001036&Mode=0

消費者庁 若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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