大学入試センターが「大学入学共通テスト」の導入に向けた2回目の試行調査(プレテスト)の結果を公表
先日、センター試験が実施されましたが、同試験の実施は、残すところ来年度分のみとなりました。いよいよ再来年度の2020年度には、センター試験に代わり「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が実施されます。
共通テストの問題構成や内容等を決定していくにあたり、「思考力・判断力・表現力」等をより重視した、新たなねらいの問題を出題した場合の正答率や解答の傾向等をあらかじめ分析しておく必要があり、そうした分析を行うためには、地域バランス等にも配慮した、分析に必要な規模のデータを集めることが求められます。そこで実施されるのが試行調査(プレテスト)であり、一昨年に続き、昨年11月、2回目の調査が実施されました。今回は、前回の調査結果の分析・ 検証を踏まえて作成した問題について、全国的な回答データを収集し、共通テストの問題作成方針の決定に必要な分析・検証を行うことが目的とされました。調査対象者は現・高校2年生と3年生で、68,409人の生徒が受検しました。
そして、同年12月27日、大学入試センターは、今回の試行調査の結果速報として、「マーク式問題に関する実施状況」を公表しました。保護者の皆様にとっても気になるのは、「高校生はあの問題をどのくらい解けたのか?」「今回の結果を、大学入試センターはどのように受け止め、本番に向けてどうしようと考えているのか?」といった点かと思いますので、順に見ていきます。
どんな問題が出題された?-出題コンセプトは前回の試行調査を強く継承
今回も共通テスト本番を想定した調査であるため、どの教科・科目も問題がフルセットで用意されました。具体的な実施教科・科目は、以下の「平成30年度試行調査(プレテスト)実施概要」をご覧ください。
では、今回の試行調査の問題にはどのような特徴があったのか、ベネッセコーポレーションの進研総合学力テスト編集部および進研ゼミ高校講座編集部による分析結果を基に見ていきます。
「百聞は一見に如かず」ですので、まずは、こちらから(https://manabi.benesse.ne.jp/nyushi/special/pretest/index.html#point)、ご関心のある教科・科目の問題をご覧ください(センター試験からの大きな変更点である記述式問題が課される国語や数学Ⅰ・Aは、必見です!)。
代表的な教科・科目のセンター試験からの変更点は、以下の通りです。
全教科・科目を通じて言える、今回の試行調査の問題の特徴は次の2つです。
特徴その1 難易や情報量が調整された、本番をより想定した出題内容
今回の試行調査の問題は、全体的に前回の調査の問題よりも易しくなり、特に問題文の分量は減少しました。ただ、現行のセンター試験と比べると依然として多く、読解に時間を要した受検者も多かったと思われます。
問題の難易や情報量が調整されるとともに、今回は配点が具体的に示され、マーク式問題の平均得点率が5割程度に設定されるなど、共通テスト本番が強く意識された出題内容だったと言えます。なお、英語では、筆記[リーディング]とリスニングの配点が各100点で均等になりました(現行のセンター試験は、筆記[リーディング]が200点、リスニングが50点の配点)。
特徴その2 「探究場面における知識の活用」「思考力の重視」など、出題コンセプトは前回調査から継承
授業において生徒たちが話し合いやグループワークを通じて課題に取り組む、探究活動の場面での知識・技能の活用が求められたり、思考力がより重視して問われたりするなど、前回の調査で見られた出題コンセプトは強く継承されました。また、「正解が複数ある問題」や「前問の解答と連動する問題」、「解なしの選択肢を解答させる問題」などの新傾向のマーク式問題も、継続して出題されました。現行のセンター試験と比べると、特に難関大学志望者層とそれ以外の受検者層との間で、読解力や思考力の面で差が開きやすいと思われる出題内容でした。
結果はどうだった?-目標の平均得点率5割程度の達成状況は教科によって異なる結果に
以上のような特徴を持った問題に、受検者(高校生)はどれくらい対応できたのでしょうか。国語と数学Ⅰ・Aの記述式問題を除く、マーク式問題の結果が、昨年の12月27日に大学入試センターから公表されています。
試行調査(平成30年11月実施分)の結果速報等について
https://www.dnc.ac.jp/news/20181227-01.html
前述の通り、今回の試行調査のマーク式問題の平均得点率については、上位層の識別も含めた多様な識別を図ることを意識し、5割程度を念頭に実施されました。その結果は、全19科目等(※1)のうち7割を超える14科目等(※1)で、平均得点率が5割程度以上となりましたが、数学の2科目(数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B)及び理科の3科目(物理、生物、地学)は5割程度には及びませんでした。
※1 英語は、「筆記[リーディング]」と「リスニング」を併せて1科目だが、満点をそれぞれに設定しているため、ここでは別々に数えている。
数学について、ある都立高校の先生は、「これまでのセンター試験は、すぐに数学の知識や技能を使って、考え、判断して解く問題であったのに対して、共通テストの数学は、学校の階段や生徒同士の会話といった、身の回りの物や学習場面など、日常の事象が題材として取り上げられ、それを数学的に捉えることから始めなければいけない点が難しかったのではないか」と、平均得点率が5割を切った原因を分析しており、同様の指摘を多くの先生がしています。大学入試センターも、会話文も含めて提示する題材のさらなる精選を図ることなどの工夫について検証し、具体的な対応策をまとめていくとしています。
物理については、様々な分野・領域から小問単位で知識の理解を問う第1問の正答率が予想よりも伸びなかったことから、「当てはまる選択肢を全て選ぶ問題、数値を当てはめる問題といった新しい出題形式も影響したものと考えられる」と分析しています。そのため、小問単位で知識の理解を問う第1問の問題作成方針を中心に検証し、具体的な対応策をまとめていくとしています。
生物と地学については、実験・観察・調査を行い、その結果を基に考察するという学習経験の不足が伺える結果となった(データの軸の意味を捉えずに教科書で見たことのある形状のグラフを反射的に選択していたり、調査の経験があれば対応できるはずの問題に対応できていなかったりするなど)ことから、科学的な探究の過程を重視するという方向性は維持しつつ、受検者の現状に照らしながら、知識の理解や思考の過程をより段階的に問うことや、組み合わせて考える情報の量を精選することなどの工夫について検証し、具体的な対応策をまとめていくとしています。
さらに、今回の受検者には高校2年生も含まれることや、高校3年生の秋から1月にかけては、点数がかなり伸びる傾向にある時期であると一般的に言われることなども踏まえて、平均得点率が5割程度以上であった科目についても必要な検証を行い、問題作成方針に反映できるようにしていくと、大学入試センターは述べています。
今後の予定は?-19年度初頭に「実施大綱」、20年度初頭に「実施要項」を公表
今回の試行調査の最終的な結果は、今年度中に公表される予定です。そして、来年度、2019年度初頭には、試験時間や試験期日、科目選択方法等が示される「大学入学共通テスト実施大綱」を文部科学省が策定・公表し、それを踏まえて大学入試センターが策定する各教科・ 科目における問題のねらいや実施方法等に関する通知が行われることとなっています。共通テストの実施年度である2020年度初頭には、時間割や出願期間等も示される「大学入学共通テスト実施要項」を大学入試センターが策定・公表して、2021年1月に共通テストの実施を迎えるというスケジュールです。
今後も、文部科学省や大学入試センターからの共通テストに関する発信の中で、お子様や保護者の皆様に直接関係する内容については、本コーナーで分かりやすく読み解いていきます。引き続き、ベネッセコーポレーションのマナビジョンを定期的にチェックいただき、その発信内容にご期待ください。
転載元:Benesseマナビジョン(高校生の進路・進学を応援する情報サイト)
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。
【保護者の方へ】
今までの大学入試センター試験との違いをまとめると、ポイントは3つ。
1 平均点の設定(得点率)が5割程度(従来は6割~6割5分程度)
2 英語配点はリーディング100点、リスニング100点(従来はリーディング200点、リスニング50点)(これに加え、4技能の力を測るため、外部の資格・検定試験も活用)
3 「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増え、記述式の出題もある。
「思考力・判断力・表現力」は、受験前の短時間で身につくものではなく、学習の積み重ねが必要です。高1生は本番まで約2年。時間を有効に使いましょう。
学校の授業は「思考力・判断力・表現力」を育む内容に変わってきているため、学校の授業にしっかり取り組むことが第一です。
家庭では、親子で会話をする際に、一つの話題(課題)を、主張「私はこう思う」とその根拠「なぜかというと〇○だから」をセットで話すことを意識してはいかがでしょうか。論理的思考を含んだ会話は、お子様の思考力を育成する手助けになると思います。
(詳しくは、11月22日公開の「小中学生の思考力を育むには」参照)