「高等教育“無償化”」をアテにしてはいけない理由

“無償化“の対象はクラスで3~4人!?

子育ての費用を応援しようと、国は「幼児教育の無償化」や「高等教育の無償化」を進めています。幼稚園・保育園の費用が無料になったり、大学へはタダで進学できるようになったりするのだから、家計に重くのしかかっている教育費の負担はずいぶん軽くなると感じる子育て世帯は多いのではないでしょうか。

けれど、幼稚園・保育園も、大学・専門学校も、かかる費用を「無条件」に無償化してくれるわけではありません。一定の基準をクリアした人だけが、一定の範囲の費用について無償になったり負担が軽くなったりする仕組みです。

大学・専門学校の場合、支援措置の対象は、「真に必要な子供たち」に限定されていて、国立大学の授業料全額が無料になるのは、住民税非課税世帯に限られます。

国立大学の学生(学部生+大学院生)について、授業料全額免除の対象人数を6万5000人として予算が見積もられており、学部と修士課程では定員の約12%が対象になる計算です。小学校のクラスが30~40人で高等教育に進学する子が24~32人だとすると、そのうち3~4人くらいが授業料免除になるということです。

未来を支える子どもたち全員の学費が、タダになる……のではないことを理解しましょう。

<無償化>の対象になっても学費ゼロとは限らない

「高等教育の無償化」は、学校(国立・公立・私立)によって、授業料が免除になる上限が異なります。

国立大学は、「授業料の全額免除」という区分がありますが、該当するのは住民税が非課税の世帯だけです。住民税が非課税ではない世帯のうち、年収の目安300万円未満は非課税世帯の3分の2、380万円未満は3分の1の額の支援にとどまります(両親・本人・中学生の4人世帯の場合)。

次の図は、授業料免除の考え方を表しているものですが、学校に払う授業料と免除してもらえる額には差があることがわかります。

その差額は、無償化「以外」の方法で用意しなくてはなりません。

私立大学は、国立大授業料の額に、私立大平均授業料と国立大授業料の差の半分を上限として加えた額の授業料が減免対象ですので、非課税世帯であっても、授業料全額が「無償化」の対象ではないということになります。

ところで、大学の費用について考えるとき、注意すべき言葉があります。

大学に払う費用のことを「授業料」と表現するのは、正しくはない……ということです

国立大学に納めるのは「授業料」ですが、私立の大学・専門学校では、授業料に加えて施設設備費や実験実習料など、いろいろな名目を含む学校納付金を払います。授業料以外の学校納付金は無償化の対象ではないため、「授業料」と「学校納付金」をきちんと使い分けないと、制度を誤解してしまう可能性があります。

「無償化」の対象になれればラッキーくらいのつもりで

学ぶ意欲がありながら、学費を用意できない学生を支援するためにつくられた、今回の「高等教育の無償化」制度。進学によって生涯賃金を上げることを目指してもらい、格差の固定化を防ぐことも目的です。

意義のある政策ではあるものの、我が子が該当するとは限りません。むしろ、該当するということは、経済的にギリギリの学生生活を送るということになりそうです。お金の心配をしながらでは、学業に身が入らない可能性が高まるとも考えられます。

我が子に、しっかりと学んでほしいと考えるのであれば、私立大学文系の学校納付金平均額に教科書などの費用を加えた500万円程度を目標の目安として、これまでどおりの貯蓄を続けることが重要です。

生まれてすぐに貯蓄を始めれば、毎月2万3150円(≒500万円÷18年間÷12カ月、利息・税金は考慮しない)の積み立てで500万円になります。

学資保険や積立預貯金など、我が家に合った方法で、お子さんが小さいうちから大学の費用の準備を始めてください。

(筆者:菅原直子)

出典:
文部科学省「「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)において導入することとされている高等教育の負担軽減方策のポイント」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/22/1409413_1.pdf

文部科学省「高等教育の負担軽減の具体的方策について(報告)」参考資料集
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2018/06/19/1406226_03_9.pdf

文部科学省「平成30年度学校基本調査(速報値)の公表について」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/08/02/1407449_1.pdf

文部科学省「学校基本調査-平成30年度結果の概要-より 調査結果の概要(初等中等教育機関、専修学校・各種学校)」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/08/02/1407449_2.pdf

文部科学省「平成28年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2017/12/26/1399613_01.pdf

プロフィール

菅原直子

「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

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