小学校でプログラミングを教えやすくするには

2020年度から小学校で必修化される、プログラミング教育。文部科学省は今年3月に先生向けの「手引」を作成して、狙いや指導法を示してきました。各地で始まった取り組みを元に、このほど内容が改訂されました。小学校の先生が取り組みやすいよう、具体的な実践例などを追加したといいます。

楽しさや面白さを味わうのも授業

国語や算数といった教科ではない「プログラミング教育」には、教科書がありません。「どのように教えればよいのか」という声は、導入が決まった時から上がっていました。そこで作成されたのが「小学校プログラミング教育の手引」(第1版)でした。今回改訂された第2版では、各地での取り組みを踏まえて、説明の充実や指導例の追加を行いました。
改訂の大きなポイントは二つです。一つは、指導例を追加したことです。

手引は、学校の教育課程内でプログラミング教育を行う活動場面を、A~Dの四つに分類しています(A: 学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの、B:学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの、C: 教育課程内で各教科等とは別に実施するもの、D:クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの。他に教育課程外や学校外のE・F分類)。
そのうちC分類で、「プログラミングの楽しさや面白さ、達成感などを味わえる題材などでプログラミングを体験する例」が追加されたことが注目されます。「プログラミング言語やプログラミング技能の基礎についての学習を実施する例」も、記述の優先順位が格上げされています。
タブレット端末の画面をタッチしてプログラミングできる教材が広がってきたことにより、キーボード操作に慣れていない子どもでも、プログラミングの働きを実感できたり、モチベーションを持てるようになったりしたことが背景にあると思われます。

体験だけに終わらせない授業を

もう一つは、プログラミング教育の狙いを、C分類に『プログラミング的思考』を育むことや「プログラムの働きやよさなどに気付くこと」と明記したことです。
プログラミング的思考とは、自分の思ったことを実現するには「何をしたいのか」や「どのような方法が必要か」、「手順はどうすればよいか」などを論理的に考えていく力のことを言います。プログラミング言語の扱い方を覚えることだけが狙いではありません。これはプログラミング教育を導入するにあたり文部科学省が繰り返し強調してきた部分で、体験型の学習活動が想定されるC分類においても、念押しした形です。

今、小学校の現場は新学習指導要領の移行期間で、プログラミング教育だけでなく英語や道徳などの対応に追われています。そのような中、今回の改訂は、現場の先生方にとって、プログラミング教育に取り組みやすくなる明るい知らせになったはずです。
同時に、「体験しただけ」に終わらせず、プログラミング的思考を育む内容に高められるか、授業の質も問われてくるでしょう。

(筆者:長尾康子)

※小学校プログラミング教育の手引 第二版
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm

※未来の学びコンソーシアム 小学校を中心としたプログラミング教育ポータル
https://miraino-manabi.jp/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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